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2012/09/08

卒論で何が変わるのか

0909夏休み前に、W大の「職業論」演習をやっていて、学生たちは自分たちだけのことばかり議論していてあきたらしい。教室を回っていたら、「それじゃ、先生は今の仕事は好きですか」と質問されてしまった。もちろん、「好きですよ」と答えたが、具体的にどこが好きなのかと言われれば、たぶん返答に窮しただろう。

けれども、今日だったら、きっとはっきりと答えられるだろう。今日は、夏休み後の最初の卒業研究のゼミナールが、東京文京学習センターで行われた。そこで、一人の方が、体調を崩しただけで、あとの6人が出席してきた。しかも、例年になく、すでに結論部分まで書かれた草稿をかなりの人が提出してきたのだ。

最後まで書かれている必要がないのだが、山場となるような論文の中核部分が含まれているものが、この段階では必要があるのだ。つまりは、キラっとするアイディアがこの世に生まれたかどうか、ということだ。それは、ほんの片鱗でよいのだ。このとき、やはり教員になって良かったなと思うのだ。

それは、本人はどう理解しているのか分からないが、少なくともこのゼミのみんなの輪の中に入ってきたことが、切っ掛けとなって生れたものであることは間違いない。そして、論文が進んだのだということである。もしこの集団に加わらなかったならば、おそらく4月から現在までの間で、これだけのアイディアを生み出すことは不可能だったに違いない。自分の努力はもちろん誇りに感じてもらっても良いが、他方で集団効果のようなものが働いたことも実際には相当な影響を与えていると思われるのだ。

ひとつのことを書き切った時の顔は、疲労で荒れていても、輝いている。今日のみんなは、そんな顔を見せていた。全部の話を聴くのは、数時間かかるのだが、それでも勢いがあるということは皆にわかることなのだと思われる。

卒業研究の利点は、どこにあるのだろうか。一時は、学部では授業中心で行って、論文作成は大学院で行ったらどうか、とも考えたこともあったが、どうもそういうことではないらしい。卒業研究独自の存在理由があるように思える。第一に、修士論文が二年かかるのに、卒業研究は8ヶ月で仕上げなければならない。集中力がつく。第二に、ダカラと言って、決して卒業研究の質が落ちないということもある。つまりは、短期だから、書くことができるというテーマもあるのだ。練習というのだろうが、この言葉ではすくい取れない状況があるのだ。

0916第三に、もっとも重要な点は、「始まり」ということではないだろうか。まずは、書き始めてみることは、たいへん大切なことだと思われる。自分の世界が広がったような感覚が、この「始まり」で生ずるのだ。そして、この始めたことが、周りの世界へ次第に影響を及ぼしていくことを感じることができれば、大したものだと思われる。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。