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2012/08/16

桃に酔うということ

823昨日のパン屋さんに置いてあった、桃を買い求めて熟すのを待っているのだ。それが、仕事をして深夜になって来ると、プーンと香り立ってきて、むせるほどに甘い匂いをはなってきている。もう仕事はイイから、ほどほどにしなさい、と誘ってくるのだ。写真のように、右に覚醒のための珈琲、左に酩酊のための桃を配置している。桃がなければ、酔うためだけならばワインでも良いのだが、やはり仕事があるときにはほんとうに酔ってしまうわけにはいかないところがつらい。

819桃には、豊かな印象を持っていた。すこし高級な果実だ。このことをほんとうに理解したのは、きわめて最近のことである。

819_2じつは、桃太郎伝説が岡山の伝説であることを大人になるまでは知らなかった。それまでは、桃太郎は中央の、やはり京都当たりの伝説ではないか、と思っていた。鬼退治というのは、だいたい中央が地方をやっつける、ということを最終的な教訓とするために伝説化させたとのだと思っている。たとえば、鬼退治で有名な酒呑童子伝説は、中央である京都が帰化人である異端を支配においたことを、典型的に伝説化したものだと思う。

814_26それでは、なぜ岡山で鬼退治が問題になったのだろうか。これは、深遠なテーマである。岡山は、中国地方ではかつてから、地方であった。関西に対しても、広島に対しても、地方の立ち位置を保っていた。

となると、桃太郎は酒呑童子の地方版ではなく、むしろ立場を逆転させている。山奥から川に沿って流れ着いて、最後は鬼退治を果たしてしまう。むしろ、プロセスが大事で、途中で犬や猿や雉を家来にしてしまう。地方から、周りを統合して、中央の鬼退治を行ってしまう、典型的な地方主権モデルなのだ。

この意味で、桃には尊敬の念を持っている。他に、桃にまつわる思い出といえば、毎日一個ずつ必ず桃を食べる習慣を持っている人に出会ったことがあることだ。それは、わたしの目には、たいへんお洒落に映った。高校生時代のアルバイトで、建築現場の地鎮祭を請け負う会社に毎日通った経験がある。それは、今まで机の上だけで人生が動いていたのが、まさに180度違ったいわばコペルニクス的転回を果たした、生活の体験を受けることになって、これで随分と人生観が変わった思いがある。

毎日、工事現場に行くのだが、そこでテントを立てて、地鎮祭を行って、またテントを閉じて帰るという毎日だった。これで人生観が変わるというのも変かもしれないが、机の上以外にも、ノミナルな生活があり得るというのは、鮮烈な体験だった。仲間の中には、この生活が半分で、あと半分はギャンブルが占めていたという人もいて、それで10年が経ったと事も無げにいう人もいた。それはそれで、たいへんなリアリティがあったのだ。

桃は、それらすべてを表しているようだった。現実の生活の厳しさと、切った張ったの楽しさ苦しさと、桃をみるとそれらが凝縮されていたように思える。毎日立ち寄る八百屋さんが決まっていて、その人のためだけに、毎日一個は必ず桃が用意されていたのだった。

823_2というので、この一個というところに、豊かさと贅沢さが凝縮されているのだが、だから言い出しにくかったのだが、じつは冒頭の写真のパン屋さんの桃は、5個で200円だったのだ。安価だからといって、決して贅沢では無いとは言えないという、一つの典型例である。この香り立つ匂いがわかるだろうか。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。