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2012/05/19

ひっくり返してみると、真実が見えてくる

Photo_46東京文京学習センターで卒業研究のゼミを行った。5月になって、最初の混乱から脱して、落ち着いた議論ができた。まだまだ磨かなければならないところは多々あるとはいえ、いつもながらゼミ生の発想の豊かさについては驚くばかりだ。多くは長い人生の中で得てきた、隠れた知識が成せる技ではないかと感心している。時間が経ってみなければ、わからないことは、長い人生の中では存在するのだ。

今回は、長崎在住のYさんがWeb会議で参加してきたので、同時中継で進行して行った。途中、長崎では選挙でも行われているのでしょうか。街宣カーのような響きがときどき聞こえてきて、何やら日本中の物事が、降ってくるような雰囲気の中で、ゼミが進んで行った。夕方、5時近くには、無事終了した。遠くから出かけてきている方は、都内のお子さんに会うらしい。ということで、夕方から少し時間ができたので、久しぶりに、チネチッタへ回ることにした。

Photo_47ジョニー・デップ主演の映画「ダークシャドウ」をみてきた。監督ティム・バートンの笑いには、何か影がかかっていて、それをひっくり返すと真実が現れるというものだ。現代において真実を探そうとすれば、影の部分からしか、それを探り出すことができないと言っているようだった。

ひっくり返しは、映画的手法の中心だと思う。けれども、ひっくり返しを狙っても、すべての人が可能であるとは言えないところが、難しいところだ。

物語となるのは、米国のコリンズポートという水産業の盛んな町である。ここにコリンズ家という英国のリバプールから移住してきて、大金持ちとなった家がある。息子のバーナバスを好きになった召使の子アンジェリークは、じつは魔女で、バーナバスを独占するために、彼の両親、奥さんも殺してしまう。数世紀に渡る闘いが繰り広げられることになるのだ。

20世紀となって、舞台となるコリンズ家を訪れた家庭教師に対して、男女平等・不平等について、女主人が面接で質問するシーンがある。それに答えて、「男女は不平等だ」というのだが、しかし、「女性がいなければ、男性の役割もなくなってしまう」と言わせていて、この全体の物語の隠喩を盛り込んでいる。

監督ティム・バートンの取り上げる物語は、ヴァンパイアや魔女がたくさん登場するので、いつもおどろおどろしい感じがある。顔面蒼白の仮面をつけたような、キャラクターも、それを倍加しているのだが、実際には、話の筋はノーマルで古典的だと思う。女性の普遍的なポジティブな行為を描くことで、現代社会の潜在的な要請に応えていると思われる。

かつての男性の家庭観は、配偶者を閉じ込めようとしており、所有欲に基づいていたと考えられていた時代があった。映画の中で、度々出てくるセリフ「血は水よりも濃い」ということが、男性支配の象徴だったのだ。

この映画は、この古典的な家庭観をそのまま継承しているという点では、極めて正統的だといえる。ところが、この価値観をそっくり女性にもたせることで、ひっくり返して見せるのだ。さらに、ファンタジーとしてではあるが、光の部分をひっくり返して、影の部分に真実があることを描いている。そして、このひっくり返しによって、映画として観せて、何の違和感もないではないかと、思わせてしまっているところが、ダークシャドウの意味ではないかと思う。

それにしても、エヴァ・グリーンが演じる魔女・悪女アンジェリーク像は、ひとつの人間像として、普遍的なタイプだと思う。ティム・バートンのアニメ映画の中に登場してきても、十分に「いい女」だと思う。どんなに裏切られても、いつも主人公に入れあげていて、たとえ命を奪ってまでも、愛ということを成就させようとする。アンジェリークを観るだけでも、この映画を見る価値があると思う。

Posterこの映画は、上述のようにみれば、十分に古典的であるのだが、ちょっと考えてみればわかるように、映画というものは、たとえテーマは古典的であっても、手法を変えれば、十分に現代的であるということも、この映画を観ればほんとうのことのように思えてくるのだ。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。