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2012/05/21

セザンヌの意識した「多様性」とはなにか

Photoセザンヌの絵画を見てきたが、まだまだ分かっていないな、と正直なところ思っている。それで今回は、ちょっとした視点を定めて、観てみようと思って出かけた。

5月の陽気がいっぺんに降ってきたという、一日であった。Photo_2連休中は避けたいと思っているうちに、そろそろ新国立美術館でのセザンヌ展会期も残すところわずかとなってきた。駅に降り立つと、すでに階段を登ったところで、行列ができている。やはり、中も混んでいるのだろうか。

Photo_6ちくま選書の「セザンヌの手紙」を以前から読んで見たいと思っていた。セザンヌは、近代絵画の父と呼ばれていて、その後の絵画の歴史の出発点となったと言われている。この点を確認したいと常々思っていた。このなかで、ひとつ気になっていたところがあった。

Photo_4それは、「自然の多様性」という言葉を出して、その描き方に言及しているところだった。ところが、あとになって、この本の記述を探しても、どうしてもその箇所が見つからない。ほんとうにセザンヌが多様性のことについて、どのように考えていたのか、ちょっと不安に思っている。それでも詳細を確かめることはできないが、それ以外のところからは、多様性を重要視していたことが、容易に確認できる。

Photo_5のちに、キュビスムの画家たちに寄って、注目されたベルナールへの手紙の箇所では、次のような文章がみえる。「自然を円筒形と球形と円錐形によって扱い、すべてを遠近法のなかにいれなさい。・・・水平線に平行する線は広がり、すなわち自然の一断面を与えます。・・・この水平線に対して垂直の線は深さを与えます。ところでわれわれ人間にとって、自然は平面においてよりも深さにおいて存在します。そのため、赤と黄で示される光の震動のなかに、空気を感じさせるために必要なだけの青系統の色を導入する必要が生じます。」という、のちのち有名になった箇所である。

Photo_13つまり、自然が断片として現れるのだが、深さにおいて、色彩において、画家によって統合される可能性のあることを、セザンヌは主張しているように思える。自然の多様性を認めながら、この多様性をいかに描くことができるのかを、十分に意識していたといえる。

今回の展覧会では、この事例に従った作品が、とりわけ年を取るに従って、鮮明に意識されて行ったように思える。有名なりんごを含む静物画が多数きていたが、どの面から見たのか、多面的に捉えられているのを見ることができる。

Photo_8けれども、自然との関係でいえば、やはり、「サント=ヴィクトワール山」は、上記の言葉をそのものを描いていることがわかる。手前の赤と黄の平地の配置、そして、山と空の青い配合、これらの調和は、見事に実現されている。今回同じような趣向で、港を描いていて、ブルー基調の素敵な絵もあった。このようなことを考えながら見て回っていたら、数時間があっという間に経ってしまった。

Photo_9太陽がまだまだ高かったので、陽気に誘われて、青山の街を歩くことにした。みんな同じような気分だったらしく、近所にある有名なWという喫茶店は、外に開放されたガラス窓が客を誘ったらしく、何時間待っても入れないほどの混みようだった。

Photo_12発想を変えて、表参道へ出て、昨年入った喫茶店に今回もお邪魔することにする。青山通りをすこし横へ入って、二階へ上がったところにある「L」という茶店に入る。やはり、休日は、こちらの方が空いている。手前の小部屋の席に案内される。窓際のテラスにテーブルがくっついていて、外を通る人びとを見下ろすことができる。小径の展望の効く特等席だ。ケーキは柔らかなクリームの添えられた、少し小さめのガトウショコラ。コーヒーは深煎り苦目のブレンド。しばし、セザンヌ展を思い出しながら、休憩。

Photo_11帰り道は、青山学院大学を迂回して、六本木からくる道路沿いのトンネルを潜って、壁に描かれた模様を楽しみながら、クロスタワービルのテラスへ出る。ここからは、ヒカエリエの中を通って、直ちに渋谷駅に到達できるのだ。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。