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2012/04/26

裏切りは不信と確信と共にやって来る

Poster呼び声どおりの映画は少ない。その中にあって、映画「裏切りのサーカス」は、原題がTinker, Tailor, Soldier, Spyで、いかにも曲者揃いのスパイ劇という匂いがプンプンとしてきて、堪らない。アダ名が鋳掛け屋、洋服屋、兵士などで呼ばれる英国情報部(サーカス)幹部の一人が「モグラ」と呼ばれるソ連の二重スパイなのだ。

事件は、諜報機関のトップであるコントロールが右腕の主人公スマイリーと辞任するところから始まる。一連の事件の発端になったのは、ソ連側がW作戦を仕掛けてきていたことにある。この作戦で、ソ連の情報を混乱させるために、英国情報部幹部たちに、偽の情報を持たせ、故意にソ連へ通じさせるという作戦を取る。ところが、ソ連側はその上を行って、その情報の流れを利用して、二重スパイの「もぐら」に真の情報を持ち出させることに成功する。

この「もぐら」は、幹部のうちの誰だったのか。コントロールが謎の死を遂げたあと、スマイリーに「もぐら」探索命令が下されることになる。スパイ同士の虚々実々の駆け引きが展開されることになる。スパイの世界では、すべて虚実であっても、それも真実なのだ。嘘は日常のことであり、嘘の中に真実があると言って良いほどだ。もし疑問が生ずるとすれば、それは真に本当のことが表に現れてしまった時に、なぜなのかが問われることになるといえよう。

さて、この作者の仕掛ける頭脳劇にどれほどついて行くことができるだろうか。じつは、劇場はほぼ満席であったのだが、わたしの隣に座った若い人は、始まって30分ほどで眠り込んでしまった。だからして、決してこの映画は、すべての人向きではない。けれども、なぜそう行動するのか、と問い始めたら、眠気などは吹っ飛んでしまうはずなのに、と思うのだが。

二重の関係性ということが、信と不信の両方を運んでしまうところまでは真実であると言えるが、その関係のどちらが真実で、どちらが虚実であるのかは、このようなスパイ状況では見えない。そして、見えないままに、映画も進行して行くのだが、この複雑さが堪らないのだ。

映画の色調は、極めて英国調であるのだが、どうしてそう見えるのかは、この映画の物語と同じように全体から来るイメージにかかっているからだと思いたい。担当したデザイナーの力量にもみるべきものがある。同様にして、デザインが自律していると同時に、英国諜報部の特徴は、個人主義的であって、常に命令に従わない者が現れるところが物語を面白くしていると思う。だからこそ、二重スパイ問題は、英国情報部にとっては、普遍的な問題なのだと思われる。

Photo_6W大の講義まで、まだだいぶ時間があるので、久しぶりにお堀端を日比谷から東京方面へ向かって散歩する。日比谷公園の角から右に折れると、まず見えるのが、第一生命ビルで駐留軍が本部に使っていただけあって、重厚な建物だ。玄関を入ると、贅沢な空間が広がっている。次のビルが帝国劇場で、いつも中年・老年の小母さんたちが集団をなして玄関近くにも、また、それを見ながら遠巻きにして、またたむろしている。

Photo_7そして、今日の目当てとしていた東京會舘ビルである。漢字が旧字で表示されているところからも、権威を感じる。ここまで、三つのビルだけにもかかわらず、ずいぶん歩いたな、という気分だ。気分だけではなく、実際にビルの大きさが違っているのだが。ひとつひとつのビルの大きさが現代のちまちました雑居ビルとは異なるために、街並み自体も風格があるのだ。落ち着いているのはよいのだが、その分費用がかかっており、利用するにも応分の負担が必要であるところが、すこし欠点だ。

Photo_9堀端には新緑の並木が薄っすらと雨露で輝いており、車の交通量がもう少し少なければ、ここは格好のオープンスペースのカフェになることだろう。昔栄えた街が再生されて、将来もっと客がくるようなまちになるだろうか。東京會舘の窓側の席はゆったりしていて、テラス的な気分を十分伝えている。Photo_10もう少し日本の人口が減って、ここが散歩道として復活するようになる可能性は十分あろう。そのころには、もう生きていないかもしれないが、実現可能な状況として、想像することだけは現在でもできるだろう。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。