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2012/04/24

車で追いかけられ、兵士に銃を突きつけられたら、どうするか

Photo_5世の中で最も行きたい場所と、最も行きたくないところを挙げなさい、と聞かれたならば、前者はたくさん挙げることができるが、後者については、わたしには想像力が欠如していて、そうたくさんは挙げることができない。けれども、この映画をみたら、一つ追加することができるだろう。

ほぼ確実に死ぬかもしれない場所は、最も避けたいところだ。「ルート・アイリッシュ」という道路は、世界でも珍しくテロが多発する場所として知られているらしい。この道路は、米軍区域とバグダッド空港を結ぶ道路で、アルカイダをはじめとして、現地の戦闘ゲリラ隊が目を光らせ、常に襲おうと手をこまねいているところだ。もしここを任務で、一日何回も往復させられたとしたら、それは他殺に近い行為だということになるということだ。

映画「ルート・アイリッシュ」(ケン・ローチ監督)を、千葉劇場で観る。物語は、このルート・アイリッシュ道路で車が炎上し、友人のフランキーを亡くした元民間兵のファーガスが、この友人の死に疑念を抱き、預かった携帯から事件を解明して行くことが始まりとなる。イラク戦争での民間兵、英国へ帰った民間兵の喪失感、残された遺族、妻レイチェルとの違和感、組織の硬直性など、社会問題とサスペンスの中間を狙った映画だと思う。

問題は、国の軍隊ならば、その軍隊の行動は最終的にはその国に帰属するものだと言えるけれども、民間兵の場合には、国が雇ったからと言って、その国の責任になるのか、という点である。おそらく、民間兵の行動は、国の軍隊よりは自主的な判断で行動することが許されていると思われる。命令が気に食わなかったら、最終的には、民兵を辞めれば良いからである。

そうすると、民間兵の責任は誰が取るのだろうか、という疑問が湧いてくる。イラク戦争では、戦後のイラク議会で「民間兵の責任を問わない」という法案が可決されてしまった、とこの映画は伝えている。戦争が何らかの合理的な説明で解決できるものではないことは知っているとしても、このようなルールのない命のやり取りが行われていることが、実際のところ真実なのである。

最後は、戦争の連鎖は報復を以って閉じており、戦うことがコミュニケーションの元にはならないことを、苦々しく伝えている。それにしても、銃や爆弾の使い方が、これほど日常化しているのは、常に戦争状態であることを、彼らは認識しているからに違いない。わたしたち日本においても、このような戦争状態を想定した日常生活を暮らすことができるだろうか、実際には、このような戦争状態が日本にも存在することを想像できるだろうか、ということをこの映画は突きつけている。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。