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2012/04/03

春の猛烈な嵐が来る前に、散歩に出た

Photo良い意味でも悪い意味でも、新自由主義と保守主義の原理主義者としてのサッチャーのイメージが変わってしまうのではないか、と思ってしまったので、鑑賞することを抑制してきた。映画「マーガレット・サッチャー 鉄の女」のことである。ところが、ここが英国人のユーモアというのか、アイロニーというのか、この映画を見ていると、ここに来ても真面目に批判していて、これはこれで凄いと思った。

つまり、サッチャーという歴史上の人物からは離れて、かつて名を遂げた女性の物語として、よく描かれていると思った。映画的には、メリル・ストリープの演技に軍配が上がるのだと思われる。映画の出だしに、年老いてからスーパーマーケットへ行くシーンが映る。彼女が引退後、家を抜け出して、ミルクを買いに行くシーンだ。身体にたくさんのパッドをおそらく巻きつけての、化け方は堂に入った演技だと思う。そして、帰ってから警備の人たちからチェックを受けるところは、警備の人の機関銃などがちらっと写ったりして、リアリティがあった。日常、銃口や爆弾を気にしなければならない社会がサッチャー時代だったと思う。

Photo_2サッチャーの英国首相時代の数々の武勲は、丁寧に盛り込まれている。フォークランド戦争や、炭鉱デモとの闘争、IRAの爆発事件などなど。ちょうど今日がフォークランド紛争勃発後、30年に当たることも、何かの縁かもしれない。

わたしは、サッチャーのこれらの出来事が終わった後、1993年に英国へ1ヶ月ほど行っていた。このときまだ、爆発で壊された建物がシティでは修理されている最中だった。そして、街を歩いていると、軍隊が銃を持ってトラックから駆け出してきたりして、テロ対策の軍事訓練だということで、遠くながら銃を向けられたりした。良い気はしなかった。

Photo_3この映画は政治的な変遷を描いた映画というよりは、むしろ英国首相を妻や母として持った家族の物語だ。そこで、この映画の微妙な立場が明らかになる。異論はあるかもしれないが、保守主義の砦の一つが家族であることは大方の人は認めると思われる。それで、保守主義を攻撃するとして、これまでは経済政策や政治状況が攻撃の的になってきた。つまり、新自由主義と保守主義の両方が、サッチャーの基本であったのだが、これらを理論的に批判することはほぼ種が尽きてしまったために、保守主義の牙城である家族問題に標的を定めてきたのが、この映画の趣旨はないかと推測している。

Photo_4それで、家族というものは円満に過ごすべきだとする保守主義の考え方に対して、サッチャーは、現実には家族問題でも失敗していた、ということをこの映画は言いたいのではないかと、この映画の隠れた意図があるのではないかと邪推したところである。ちょっと考えすぎかもしれないが。伝記文学の発達している英国のことだから、過去の行動についての徹底的な解明を図るのがお国柄ではないか、と思った。

Photo_5散歩のついでに、川崎のチネチッタで映画を鑑賞した。それで、ランチの時間になったので、かねてから入りたいと思っていた、H屋へ入る。隣がひものなどを古くから売っている市場になっていて、その地下にある。おそらく、何らかのビジネス上の関係はあるのかもしれない。

Photo_6地下の入り口には、ひものが焼かれている。さば、さけ、あじなどジュウジュウと音を立てている。家具調度も、魚の煙がしみこんで、濃厚な焦げ茶色を示していて、落ち着く。一人で食べていても、じっくりと味うことができる。Photo_7日替わりランチが赤魚の粕漬けだったので、それを頼む。大きな椀で、大きく切った大根や人参の満載な豚汁がついてくる。年を取ると、タンパク源はやはり魚だ。店はみるみるうちに席が埋まって、家族連れも目立つ。地元でも、よく知られた店であることをうかがわせる。

いつもの珈琲屋さんで、豆を煎ってもらい、待ち時間にエスプレッソを一杯。この頃になると、天気予報通り、空がにわかにかき曇り、黒い雨雲の足が速くなった。Photo_8川崎市役所の近代的な建物にも、雨がぽつりぽつりと掛かり、突風の巻き上がる予感を感じさせた。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。