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2011/12/01

「三銃士」はなぜ4人なのか

なぜ三銃士は4人なのか、子供のときに、みんなが疑問にもつことである。ここで、3ないし4ということが、重要な意味を持っているのだけれども、それじゃなぜ2じゃなくて、3ないし4なのだろうか。

神奈川学習センターに所属していたころに、学生研修旅行という企画があって、学生たちを「地域通貨」の街へ連れて行ったことがある。そこで、各街には、それぞれが弁士だという人たちがいて、説明してくださった。

その中で繰り返された質問の一つは、人間の社会というものは、人が何人で成り立つものなのだろうか、というものがあった。社会だから、集団ということになるが、それじゃその集団というのは、何人からなのだろうか。

映画「三銃士」を観る。テーマは上記で言ったように、なぜ三銃士は3なのか、さらには、3と言いつつ4なのかという点である。近衛隊である銃士は、数多くいるはずである。それにもかかわらず、3になぜこだわるのだろうか。

物語は17世紀フランス、ルイ13世の時代、歴史上名宰相と言われたリシュリューが暗躍する策略に対して、ダルタニャンと三銃士が王妃側に回って、苦難を乗り越えるものだ。

この映画は、何故か、かのヴェネツィアから始まる。物語はフランスと英国との間で、生ずるのだから、なぜヴェネツィアから始まるのだろうか、という疑問は当然である。実際の原作に忠実に作るならば、映画のタイトルのあとのように、ダルタニャンの故郷、ガスコーニュ地方から始まるべきである。

有名な標語である「one for all」のこのoneであるダルタニャンの物語として展開されるべきである。これが現代というものの恐ろしさで、現代ではallの方が重要で、まずなぜ3なのか、ということから始めるために、ヴェネツィアが選ばれている。

三銃士であるアトス、ポルトス、アラミスに役割分業が設定されている。原作とは少し違っていて、それぞれの性格付けがはっきりしている。アトスは、水を支配し、愛に敏感でウェットな性格である。ポルトスは、火を支配し、腕力があることになっている。そして、映画ではあまり見せ場のなかったアラミスは、風を支配し、金に強いというぐあいだ。もちろん、三人とも銃士であるから、剣は共通に強いことは言うまでもない。

つまり、仕事の分業として、水と火と風を繰ることを役割分担にしていて、それぞれの取り柄を協力することで活かしている。社会にあっては、金と権力と愛も必須だ。この三つが組み合わされていることで、三銃士の力は、通常のものの数倍の力を発揮することになっている。この組み合わせからすれば、2ではなく、やはり3なのである。この3を見せるために、ヴェネツィアのシーンがまず作られた。

ところがである、3でもダメだったのである、というところが、この物語が普遍性を持ち、今日の世の中でも通用する物語になっている所以である。ダルタニャンは、なぜ必要か、と改めて問うている。仲間の力、チームのパッションを象徴しているのが、ダルタニャンであり、物語の最初に、パリへ出るに当たって、「勇気」が与えられている。三銃士は、チームとしては完璧だが、パッションはその外側から入れ込まれ、その心臓部として、ダルタニャンが登場する。このことが真の意味で、「all for one」という標語の後半を表しているのだ。

ということで、映画「三銃士」は、社会的支援論の最も典型例であるといえる。そして、支援ということが、欧米のように、近代モデルである「二人モデル」から出発すべきではなく、「三人モデル、あるいは四人モデル」を出発点すべきことを如実に教えている。近代に入る前には、このような思想もあったのである。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。