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2011/12/21

会話をする以上のことを伝えるためには

Photo_35今日は、長崎学習センターで卒業研究の審査と、来年度の卒業研究についての面接を行うことになっている。忙中閑ありで、朝すこし早起きして、昨日の散歩の続きを行うことにする。前回、唐人屋敷のあった館内町を回っていた時に、孫文が長崎をたびたび訪れていて、なぜだろうかと思っていた。ちょうど今回長崎歴史文化博物館で、孫文展が催されていることがわかり、先日映画「辛亥革命」を見ていたこともあって、散歩の終着点は、歴史文化博物館と決めた。

数年来の坂本龍馬ブームのお陰で、街のいたるところに、幕末期の記念碑が立っている。思案橋の宿を出て、カステラで有名な福砂屋の前を左に曲がると、昔の花街である丸山町に出る。今は公園になっているところが、花街の中核だったところで、境界を示す石垣の跡をあちこちで見ることができる。Photo_36昨日の続きである。こちらも1640年代に、散らばっていた花街が、ここに集められたとのことだった。二重門になっていて、江戸の吉原、京都の島原、と並んで、江戸時代の三大花街だったらしい。最盛期には、1400人の遊女が集められていた。

Photo_37いまは、建物として料亭「花月」が残っていて、当時の様子を想像して見ることが出来る。公園には、案内板に当時を描いた浮世絵が張り付いていた。横浜の花街は幕末期には有名であるが、国際色豊かだったと聞く。長崎もまた国際的な交流が盛んであったらしい。Photo_42山を登ったところには、長崎ぶらぶら節の主人公となった「愛八」などのゆかりの茶屋などがあって、人びとの関係が渦巻いた地域であったことを想像させる。

Photo_43さらに、登ったところには、高島砲術を確立した高島秋帆の別邸があって、こちらは原爆で焼けてしまって、住居跡だけが残されている。床の一部だったタイルが土から顔をのぞかせている程度だ。シーボルトの塾が典型だが、当時は日本全国から、新しい知識を求めて人びとが集まってきていたのだ。Photo_45長崎全体が、日本の新しい大学として機能していて、医術、砲術、貿易術をはじめとして、実学と同時に、知識の街が誕生していたといえよう。それにしても、桂小五郎が立ち寄った料亭、小松帯刀が立ち寄った屋敷など、これだけ狭いところにこれだけ多くの人々が集まり、コミュニケーションを交わしていたということには、驚くばかりだ。この街の包容力に感心してしまう。

今回の孫文展の趣旨は、ポスターにあるように、日活映画を創業した梅屋庄吉との長い交流を描いたものだ。会場には、辛亥革命当時、庄吉が撮影隊を繰り出して、中国本土の様子を長期に渡って写した、ドキュメンタリー映画も流されていた。孫文がいかに演説のうまい政治家であり、スポンサーを大事にしたのかを如実に示していた。

もし梅屋庄吉が長崎人の典型であるならば、やはり江戸期から培われた国際的な感覚を身につけていたから、このような活躍を見せ、いたるところで、社交性を発揮することができたのだと思えてきた。

Photo_46公会堂前に出て、老舗のカステラ屋さんで買い物。レジのかたに、近くのランチの店を聞くと、すぐそばにTというランチ専門の喫茶店のあることを教えてくださった。店は昼時に掛かって、すぐに近くで働く人々でいっぱいになった。「来てますよ」とか、「まだ見えてません」という声が飛び交い、常連の多い店であることがわかる。手元が料理から離れないにもかかわらず、ニコっと、客に笑顔を返すところが、働く人には余裕をもたらすのだとわかった。このような地域固有の社交性は、わたしのような外から来たものにとても、親密感を抱かせるもので好ましいと感じた。

市電に乗って、長崎大学につく頃には、街に若い人びとがいっぱいになってきて、大学の近いことを知る。長崎学習センターは、図書館の隣にあって、長崎大学の中核にある。良い環境だと思った。

センターの所長先生や、職員方のサポートもあって、審査も卒研も順調に進んだ。来年度もここから、小さくてもよいので、また一つの知識が生まれ出でることを期待している。実際に会って話す、という極めて基本的なことに違いないのではあるが、そこでは話す以上のことが伝わっているのだ。このことを自覚できるのは、常日頃、テレビやラジオで伝達を行っていて、そのオンとオフとの感覚がわたしたちの間にあるからだと思いたい。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。