« 病院の退屈さは、普遍的な問題なのか | トップページ | 会話をする以上のことを伝えるためには »

2011/12/20

思案橋辺りで、昔の長崎の街を想像する

Photo_33昨日母を送った後、大学で仕事を片付けていたら、結構遅くなってしまった。エレベーターでM先生とばったり会って、師走における「三段階ギアチェンジ」を行わなければならない、共通の「走り具合」を確かめ合った次第である。例年どおり、もの悲しい暮れになりました、と言い合うだけでも慰められた気分になるものだ。横浜に着いたのは、深夜になっていた。このところ、鉄道事故に遭遇することが多いが、昨日も東京駅で少し足止めをくってしまった。

Photo_9今日になって、朝6時の電車に飛び乗って羽田空港へ、空路長崎へ向かう。旅は順調で、昼には長崎の中心部を歩いていた。左の写真は、街の中心にある眼鏡橋だが、なぜメガネ橋と言うのかわからなかったのだが、このように観てみると、なるほどメガネに見えてくる。

Photo_6ランチは、前回来た時に、美味しかった庶民的な店Yへ入る。今では珍しい下足番が居て、昼間から遊郭に上がるみたいだな。前回は二階のお座敷へ上げてもらったのだが、せっかく一人できた時には、店の様子のよく見える、一階に陣取ることにした。

Photo_8というよりは、最初靴を脱ぐのが面倒だ、と思ったのだが、誰でも歳を取ると同じことを考えるようだ。待たされた割には勘定場に近い、最も忙しないところに通されてしまった。けれども、ものは考えようで、この場所が店の様子を見るのにちょうど良かった。

歳を取ると、みんな二階を避けるらしい。圧倒的に、客の多くがたとえ座敷であっても、一階を選んでいた。多くは、馴染み客らしい。もっと観光客が多いのかと思っていたのだが、そうではなく、地元の人が友人を伴ってくる店という感じでたいへん好ましい雰囲気だ。女性比率の高いのも、地元に支持されていることを物語っている。

玄関を入って、食堂が入り口で仕切られている。この構造が、珍しいわけではない。この中間に勘定場があって、両者を分けている。もうひとつは、食堂と料理場とがついたてで、仕切られていて、男女の仲居さんが媒介していて、ついたての奥は、ここからは伺い知ることはできない。茶碗蒸しの定食がメインということになっていたが、食事屋の基本は多様性であって、どんな好みにでも対応できることが、地元で支持される要件らしい。

Photo_10これだけ異なる料理を、すぐに食卓へ並べるには、相当な組織管理能力が存在しているのではないかと、素人目にもわかる。普通の店よりも手がかかっているのは、下足番とそれぞれの部署を回って歩いている、管理要員だが、これだけの客が入っていれば、十分に補っていると思われる。仲居さんも余裕を持っていて、それぞれの部署に捉われずに、行ったり来たりしている。経営者の後継者が見習いで働いている風でもあり、この余裕がスラックとなって、全体の混雑を和らげている。

Photo_11今日の宿舎に入ってしまえば、明日の準備に取り掛からねばならなくなってしまうので、十分に時間をとって長崎を訪れたのは、これまで行ったことのないところを訪ねてみたかったからだ。前回来た時に、新地中華街の裏に広がる館内町を歩いて回って、江戸期の中国遺跡の多いのにびっくりしたのだ。それで、今回その中でも、二つも国宝に指定されていて、何やら不思議な雰囲気のあるお寺を回ろうと思っていたのだ。それから、もう一つ孫文関連があるのだが、それは明日だ。

Photo_12長崎で最も古い、というものがいくつかあるのだが、この長崎の古さというのはどのようなイメージを与えるのだろうか。わたしのように、横浜に住むものにとっては、幕末時に多くの新しいものが入ってきていて、同じような状況にあって、どのような文脈で古いのかが気になるところだ。けれども、長崎にはいくつかの歴史の波があって、横浜みたいに新しい記憶ばかりでないところが面白い。

Photo_13長崎の現存木造建築で最も古いという「崇福寺」へ行った。写真でわかるように、門などに見られる曲線が唐風である。多くの建物は原爆で焼かれてしまっているので、残されていないが、ここには1646年ごろに建てられた本堂と、門が残存している。黄檗宗の寺で、中国趣味がかなり残されている。福州の豪商が中国で材木を加工して、こちらへ運んで建てたらしい。これには、どうも歴史が関係している。というのも、明から清への転換の時期で、祖国を離れて、異教の地での信仰を継続する必要に迫られていたことが伺い知ることが出来る。

Photo_14福建省の民は海の民であり、媽祖信仰が強い。それは、昨年訪れた館内町に共通するものだ。この神の強さが異郷の地ではどうしても必要だったに違いない。左右にある千里眼像と順風耳を引き連れた強い神様を感じさせる。伝説を覚えていたと思い込んでいた。遭難時に、父か兄か、どちらかを助けなければならないときにどちらを優先するのか、正義論に出てくる伝説があったと勘違いしていたらしい。

Photo_15その後も、何回も、崇福寺は増築されており、さらに幕末にも商人たちに利用されていることからして、長崎の一つの中心をなしていたことは想像できる。面白いものとしては、1680年代の飢饉の炊き出しに使われた大鍋が残されている。Photo_16救貧院としても機能していたことがわかる。この寺に入る時に、あの中国式の三門から入るのだが、できれば左の門から入りたかったのだが、それは飾りで、狛犬に遮られていた。

Photo_18この辺は、古くからの街並みが残っていて、高級料亭のシンプルな門構えや街全体の余裕が歴史に耐えてきたことを教えてくれる。原爆の影響も山のかげになったところは、緩かったらしい。Photo_20鍛治町のゆったりした坂道を下って、繁華街へ向かう途中に、古くからの喫茶店Fがあるので、宿での仕事に備えて、コーヒーを一杯。午後は宿舎で十分仕事をする時間があった。今回も通信問題を持参してきていた。長崎旅行をした答案が届くとは、受け取る方も思ってもみないことだろう。Photo_21でも、それはわからないことだし、答案だけが楽しんだことを知っている。

Photo_22夕飯は近くの思案橋横丁にある、K店にて、汁が濃厚な、「そぼろちゃんぽん」を食べる。そぼろというのは、肉のそぼろではなく、上質なということだそうで、注釈付きの食事となった。横浜の中華街にもありそうな、家族運営の小さな中華料理の店だ。写真のように、具沢山で季節柄、カキも入っていて、そして、それにも負けない汁の味だった。Photo_23家族で守っている味なのだろう。でも、この豚骨風の味は、何処かのラーメン屋の味に近いような気もする。たぶん、想像するに、研究熱心な豚骨ラーメン屋のことだから、この味に当たって、ラーメン屋の方が真似した可能性がある。

Photo_24西浜町に出て、今回も夜はジャズ喫茶Mへ入る。前回は、ほぼ数時間貸切状態であったが、今回は先客があって、気の置けない話をマスターとしていた。母の介護をしているわたしと同年輩くらいの女性で、介護に疲れるとここで話すそうだ。聞くとはなしに聞こえてきたのだが、どうやら聴いてもらいたいという退っ引きならない状況があったらしい。

Photo_26今日の最後は、焼酎尽くしで、この店に飾られた壜の焼酎を、推薦されるままに端から飲んで行った。九州中から、美味しいものを集めて置いているので、それぞれ個性があった。焼酎H、つぎはM、そしてMの麹の異なるもの。Photo_27三杯目になるころには、酔いが回ってきたのだが、相変わらず、世界へ向けて開かれた窓の景色の素晴らしさと、街で購入した書籍二冊が読みごこちの良いものだったので、気持ちよくテーブルを独占し続けたのだった。

Photo_32深夜をすぎた頃、公務員のグループが二次会で流れてきて、静かな空間ではなくなったので、今日はこれでお開きとした。何処かで、酔い覚ましのコーヒーを飲んで帰ることにしよう。

宿へ帰る途中に、島津藩の蔵屋敷跡があった。観光用の立て札に、鎖国で立ち寄ることが禁止されていたポルトガル船が1647年に現れたため、西国各藩から守護の兵を駐留させることになったことで、蔵屋敷が建て始められたことが記されていた。Photo_34オランダ商館長の報告によると、金銀探索隊だったそうだ。マルコ・ポーロのころの伝説が、そのころまでもまだ続いていたことを知った。世界の情勢に右往左往していた状況は、いまでも変わらない。

« 病院の退屈さは、普遍的な問題なのか | トップページ | 会話をする以上のことを伝えるためには »

日常生活の関係」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/173786/53552152

この記事へのトラックバック一覧です: 思案橋辺りで、昔の長崎の街を想像する:

« 病院の退屈さは、普遍的な問題なのか | トップページ | 会話をする以上のことを伝えるためには »

社会経営研究配布中

  • 2015study

社会経営ジャーナル配布中

  • 2015journal

開いている講義    「社会的協力論」

  • cooperation

「音を追究する」第13回・第14回

  • art

「多様なキャリアを考える」第2回・第3回・第4回

  • cooperation

「グローバル化と私たちの社会」第11回

  • cooperation
2017年3月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
無料ブログはココログ

Recommend

プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。