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2011/10/11

映画「エンディングノート」

Photo映画「エンディングノート」を観る。午前中、どうしても書かなければならない、という仕事があったので、それを終わらせてから、電車に飛び乗って、千葉へ向かう。もちろん、書かなければならなかったのは、エンディングノートではないのだけれど。千葉劇場が会場だったので余分に時間がかかると思い、急いだことが幸いして、少し余裕を持って千葉駅に着いた。おかげで、千葉駅近辺で買物をする時間ができた。

この季節で気になるのは、今年の勝沼ワインはどうかな、ということだ。ボジョレーの騒ぎに乗るつもりは無いが、同じ趣向なのかもしれない。昨年は、宅配便で取り寄せたのだが、今年は関東圏での店がいくつかわかってきたので、そこを覗いて、たまたま欲しい銘柄が置いてあるかどうかを楽しみにしている。

今日は、大当たりだった。デパートの地下で、授業番組でも取り上げさせていただいたC醸造のGという、一般向きだが、喉が唸るような美味しいワインを手に入れることができた。棚に置かれた瓶も、すでに前面の何本かがなかったから、この銘柄を目当てにくる客が少なからず存在するものと思われる。

さて、千葉劇場には、固定ファンがついていて、いわゆる名画座の雰囲気を残している。名画座の雰囲気とは、封切りの人気映画だけを見るのではなく、個人的に選択した映画を見ているのだという、ある種の幻想を伴っている雰囲気である。だから、そこには、映画を観るという直接的な効用以外にも、同好の士が集まるという間接的な効用があるのだと感じている。

それで、今日の「エンディングノート」という作品は、たいへん面白い点を想起させる。エンディングノートとは、気楽に書く、非公式の遺言状のことだ。このノートを書くのは、本人なのだが、実際に書かれたことに従って使うのは、残された者たちであるのだ。この意味では、通常の「ノート」という、個人使用のイメージではなく、むしろ周囲の人たちに影響力を及ぼす、「手紙的」なものとしての性質が強いものだといえる。人びとを媒介することを通じて、かなりの影響力を行使する、第三者として現れるかもしれない、という可能性を、エンディングノートは持っているのだと思われる。

もっとも、本当に親しい人であれば、かつては日常のつきあいでわかっていたことを改めて公式的な遺言ということで、残そうというのだから、現代のコミュニケーション不足の時代を反映していると見て良いだろう。また、他方で、完全な公式性は持っていないので、少しばかりの非公式性をも兼ね備えたものとして、エンディングノートは存在していて、その点でもきわめて現代的なモノであり、また現代的なテーマでもあるといえよう。

映画の中で、主人公が仏教徒であるにもかかわらず、カトリック教会で葬式をあげたいということになり、主人公の娘がインタヴューをして、なぜキリスト教で葬式を行うのか、を問うている。三つの理由を答えるのであるが、このやり取りに、公式、非公式の微妙な違いの現れているのを見ることができる。その場面は、観てのお楽しみなのだが、フィルムに載ることと、載らないことがあり、けれども、載せてしまうことは可能である、という映像ならではのやり取りがあって、プライベートと公共の情報のあり方で、興味深いものがあった。

この映画は、砂田監督が主人公の次女として、プライベートに撮り続けてきたフィルムが元になっているのだが、このような映画と成るについては、是枝監督のプロデューサーとしての手腕が効いているのではないかと想像できる。彼の作品のなかで、ドキュメンタリー志向の部分をこれまでも何回も試してきていて、現実と映画の垣根を超える、というか、リアリティのある映像空間のあり方のひとつの提案があるのでは、と思われる。Photo_2それは、この映画のナレーション担当を砂田監督自身に行わせているところに現れている。主観をちょっとズラせるのだが、あまりズラせないところに、現実が存在する、とでも言うようなリアリティだ。

最後の場面で、主人公が亡くなって、周辺を漂っているかのような、映像があり、もうまもなく自分にもこのような風景が訪れるのかと思うと、妙に納得する映画となった。

Photo_3帰り道、いつもの焙煎屋によって、珍しいエルサルバトルの豆と、セールのブラジルを購入する。ブラジルは浅煎りにしたせいか、アメリカンとして飲むと、少し草の香りのする、特徴ある味を出していて、昔よく飲んだ味が再現され懐かしい感じだった。

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コメント

ご無沙汰しております。Interwovenのessayは時々読ませて頂いておりますribbon洒落た文体でわかりやすく写真も大好きです。開港記念のウオーキングで写真を取りながらおしゃべりしながら歩いたことが懐かしく思い出される年となりました。11月5日は「金沢文庫・八景を歩く」に参加します。神奈川学習センターへおいでの時はお知らせください。

久し振りですね。もちろん、11月5日には参加させていただきます。この日に卒業論文の締め切りが間近に迫って、ひとつのピークが越える頃です。論文が終わって、すっきりした方々も参加されると思います。当日お会いするのを楽しみにしております。

「青リンゴと夕陽と富士山と」のあとにコメントを書きたかったのですがうまく届くのかしら~と思いながら書いたのでした。嬉しいお返事が書かれていました。5日のウオーキング参加出来るとのこと、お目にかかれるのを楽しみにしています(o^-^o)

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。