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2011/09/06

白磁の二重性

すこし期間の長い旅行を計画している。と言っても、一週間だが。それでも出ようとすると、それまでに片付けなければならない問題が生じてきてしまう。とくに何がというわけではないが、図書館本の返却だけは、チェックしておかなければならない問題だ。この期間に、ちょっと物陰に隠れて忘れてしまう危険がある。

放送大学図書館からは、常時数十から数百冊借りているが、一般図書として借りる場合は、ルールにしたがって返さなければならない。たくさん借りる必要のあるのは、この大学特有の問題で、常にテキストを自前で書かなければならない、という事情があるからだ。次から次へ借りると同時に、次から次へ返さなければならない。

さらに、K大図書館からは、50冊借りることが許されていて、しかも6カ月も借用できる。図書館の天国のようなところなのだ。この図書館の席は、良く借りるし、また専門分野の図書が数多く揃っていて申し分ない。けれども、近年それでもこれらの分野を超えて発達する分野が数多くなり、そのためにこの図書館でも、不足を感じるようになってきた。

Photo今年度は、ここに強力な、W大図書館が加わることになった。こちらは、学部や専門図書館がそれぞれ貸し出し期間が異なる為に、さらに在庫管理が必要になった。さてそこでだが、相変わらず、前書きが長くなってしまったが、今日は、W大学の講義が前期で終了したので、それに合わせて、すべての図書を返却することにして、まだ夏休みのW大キャンパスを訪れた次第である。

Photo_2このW大の図書館の中でも、最もお世話になったのは、じつは教えている文化構想学部の図書館ではなく、社会科学系、なかでも洋書の充実しているT記念図書館であった。改めてこの建物を眺めてみると、正門の脇にあるにもかかわらず、あまり目立たない。メインの入り口とは異なるところからはいることもあって、入り口からして地味な感じだ。

Photo_3写真でわかるように、Y記念館と同じ建物なのだが、裏からはいる感じである。入り口には、特徴ある「石羊」がおかれていて、朝鮮李朝の墳墓の趣を持っている。

Photo_4ここに収められている洋書は細かなテーマ別に並べられていて、そのテーマの古い本から、新しい本へたどっていくことができる。研究者にとってたいへん便利だ。それに最大の利点は、品揃えがすこぶる良いことである。

Photo_5もっとも、大学Web検索から逃れているのだが。 12日が返却期限の本をどさっと持ってきた次第だ。

Photo_6また、ここは通常、大学院生が閲覧することになっているので、中央図書館ほどの混雑はないことも、気に入った理由である。授業の前に、早めにきて随分と利用させてもらった。

南門と正門の中間に位置しているのだが、その道を隔てた反対側には、タワービルが立っていて、ここの14階には、展望のたいへん良い食堂が入っている。学食を中心にチェーン展開しているらしい。日替わりランチで、スイス風ハンバーグを食べる。大きな窓からの景色も、おかずに加えることができるだろう。

Photo_7写真にあるように、眼下に先ほど寄ったT記念図書館があり、後ろに法学部、工事中なのが、政経学部で、後ろに演劇博物館、さらに奥に中央図書館が見える。空からみると、まだまだ、空間的には活用できる部分が少なくないと思われる。街に溶け込む大学という意味では、都市型特有の典型を示している。完成型としては、ロンドンのLSEのように、街そのものが、大学であるということになっていくのでないだろうか。またあと半年後に、お世話になることになろう。

今日の二つ目の訪問は、千葉市美術館である。ここで「浅川伯教・巧」展を開催している。李朝の白磁・青磁にどうしても目が行ってしまうが、それ以外にも吟味されて、収集された綺麗なものがたくさん集まっていた。綺麗ということは、均整がとれていたり、直線が美しいということではなく、むしろ、中心を外し、白にも様々な白がありうることを示しているようなものである。このような、手垢のついたものであるがゆえに、美しさにつながっているということが観て取れるものは、探そうとすると、なかなか現実には存在しない。

Photo_8なぜ浅川兄弟は、柳などが注目するまえに、早い段階で李朝磁器に注目したのだろうか。この点は、この展覧会を観た人びとが必ず持つ疑問だ。朝鮮に教師として渡って、日ごろ日常生活を営む中で、出会いがあった、という説明は説得的だと思われる。ある日、道具屋で、ということである。けれども、その後、窯の発掘にまで手を染め、かなりのところまで深入りしていくことになる。

白磁の透きとおった美しさは、表面にあるガラス状のものと、奥にあるものとが一体となって出てくるところにある。表とその下の層との組み合わせが重要だ。表面の明るさと、二層目の複雑さとが、日本と朝鮮の歴史とダブるにしたがって、その両方に通じた浅川兄弟のひたむきさに敬意を表すると同時に、彼らの考えに想いを馳せたのだった。

もう少し時間が欲しいというところが帰り時かもしれない。名残惜しいけれども、研究会の約束をしていた本部のゼミ室へ向かう。もちろん、いつものお菓子屋で、ロールケーキを買うことを忘れなかった。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。