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2011/09/03

マーラーのアダージョ

Photo_2今年は、マーラーの年だ、と言っていた割には、マーラーのコンサートへ行っていないのに気がついた。没後100年だというので、マーラーを描いた映画「君に捧ぐアダージョ」は見たのだが、そしてそれはそれで、フロイトとの関係も面白かったのだが。けれども、それでコンサートへ行ったとは言うことはできないだろう。そんな折に、妻の友人から有難くも、券をいただいたので、二人でいそいそと出かけた。

妻は何事にも、準備万端を済ませておくことを信条としていて、わたしの性格の対極にある。昨晩も、アバドのマーラー全集をわたしから取り返し、ヘッドホンでくりかえし聴いていた。

小学校時代に、予習・復習という習慣が着くらしい。妻はきちんと、予習を行って、宿題を忘れたことがないそうだ。他方、わたしはと言えば、そのような習慣は身につかなかった。高校時代に、印象悪い、ひとつの思い出がある。予習していなければ決して判らないことを、授業中に質問されたのだ。英詩がテキストに出ていて、この作者は誰なのか、という質問だった。教科書には、まったく載っていないのだ。ところが、わたし以外は、みんなすらすらと答えるのだ。聞くと、前日の塾で予習したのだ、という。受験校にいるんだな、と思った。

思い出しついでに、良いイメージの印象も存在する。じつは、今日の日フィルのコンサートに関しては、中学校時代から高校時代にかけて、学校の帰りに良く通った思い出がある。小学校時代に信州の生活をしていて、以前に述べたように、バイオリンを習っていて、一応音楽生活もさせてもらっていたのだが、このように毎月のように、コンサートを聞く生活に入るとは思わなかった。人生で言えば、いわばこれが人間としての「予習」と言えるかもしれない。学校の予習は行わなかったが、人生の予習は、大都市特有の生活で、たっぷりと「予習」させてもらったといえるだろう。

田舎から出てきて、なるほど大都市の子供は恵まれているな、と感じた。当時、池袋の先に住んでいて、高校時代には、池袋、新宿を通って、渋谷の先へ通っていた。N響のときには、日比谷へ。日フィルのときには、後楽園の文京公会堂へ。そして後には、渋谷公会堂へ通うようになった。まだ、渋谷にパルコもなく、ジロウと教会があっただけだった。パルコ文化以前の渋谷文化もあったのである。

Photo_11今日の席は、サントリーホールの前から二列目で、中学校時代に通っていたときも、この位置をキープしていた。同好会まではいかなかったが、F君を中心として、常連層を形成していた。

Photo_12今日は、マーラーの交響曲3番である。6楽章まであるから、4楽章で拍手をしないでよ、と妻に言われていた。1楽章あたりは、どうも取っ付きが悪かったのだが、ここでの主題が繰り返されて反芻されるにしたがって、次第に身体の中に入ってきた。それにアルトの「ツアラツーストラかく語りき」の一節を歌詞とする歌曲が入ったり、子供たちの合唱が入ったりする頃には、すっかり巻き込まれてしまった。

そして、もっともグッときたのは、「ゆるやかに、平静に、感情をこめて」という指示のある、第6楽章のアダージョである。ゆったりとした弦楽奏がえんえんと続く。くりかえし繰り返し、しかし、急ぐことなく、少しずつ変わっていく。楽団員の顔を見ていても、音に乗せて、丁寧に感情を送り出している。この粘り強い、えんえんと続く、永遠のイメージは、明らかにニーチェの主題に似ている。終末の中にあって、諦めずに粘り強い歩みを保っている。なにか、心がへこんでしまうときには、これを聞くと、何とか平静を保つことができるかもしれないという、期待を抱かせることだろう。

Photo_3コンサートのあと、娘のアパートに呼ばれていた。昔はいわゆる下町だったのだが、近くに美術館やギャラリーが出来はじめて、にわかに文教的な雰囲気の町になりつつあるところだ。散歩のあと、手料理とワインをご馳走になった。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。