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2011/08/14

控え目の問いかけ

Photo_15川の土手を散歩した。娘が川の水辺に降りる階段を見つけたのだ。これまで、漆の木をすり抜け、脚を笹に切られながら、川原におりていたのは何だったんだろう。Photo_14このところ、天候が不順で、街では35度を超える天気が続いているが、こちらでは夕方には、雷雲が発達し、適度なお湿りがあり、朝晩はかなり涼しい。遠雷を聴きながら、夜を惜しんで鳴く蝉たちと一緒に、人生を振り返るのはまだまだ早いのかもしれないが、確実に近づいていることは確かだ。

Photo_17

夕べの雨もこの激しい流れとなって、下って来るのかと思うと、ぐるり回りの自然連鎖に改めて驚きの感を持ってしまう。高い山並みを背景に持つ川の流れは、いつまでも心を捉えて離さない。

Photo_16

また、川底が見通せる透明感は、社会の透明感に似ていて、底には色とりどりの石を抱きながら、表面は流れて行くのだ。

Photo_18

流れの筋を読みながら、ちょうど社会の流れと同じだなと思いつつ、川の音の複雑な伴奏を楽しんだ。

今夏の散歩で目を愉しませてくれた花々。どうしても、派手な花には目が行ってしまうのは仕方ないとしても、派手な花は派手なりに、意匠を考えていて、毎年同じだというわけではない。

Photo_19たとえば、ノウゼンカズラ(凌霄花)については、ここ数年来、スカイツリーに匹敵するくらいの、他を圧倒的に凌駕する本物のツリーが一本あって、これで決まり状態を続けて来たのだが、それが崩れたらしい。いつもの庭には見られなかった。定点観察の一つにもなっていたのに残念だが、しかし、同時に新たなノウゼンカズラの戦いを見ることになった。高さで争っていたが、今年は花の色で争っている。薄い紅色なのか、あざやかな紅色なのか、この勝敗は来年見ることにしよう。写真はバスから撮ったが、あざやかな方は残念ながら、映像が流れてしまった。

Photo_20大きな背景を持つと、花自体も大きくなるらしい。ムクゲの白い花びらがこれ以上広げることは重力に逆らうことになるかもしれないと思えるほど、広げている。ユリの花は、こちらでは毒々しい色を示す。これも野生である証拠であり、全体の野原のなかでは、このくらいの毒々しさはかえって、周囲環境を際立たせる役割を持っている。Photo_21もちろん、マキャベリが権謀術数を駆使しても、その毒々しさは、かえってドンキホーテのように、社会のなかではそよ風の吹くが如くであったと同じで、影響の度合いは考えていた程でないのだ。それと同じように、野のユリの原色はワンポイントですらない。野原の一つの背景として働くことでしかないのだ。

これに比べると、ムラサキツユクサの目立ちは際立っている。よく目を凝らさないと気づかないかもしれないが、緑のなかのブルーの威力は、驚くべき効果をあげている。もし写真に写っているなかで、全部が緑の葉っぱだけであったら、どうあろうか。これに象徴される自然界の多様性はかなり失われてしまうことであろう。Photo_22このブルーがチョコチョコはいっていることで、わたしが散歩して、目をあちこちに配る意味が出て来るのだ。ユリのように、有るだけで存在感を誇示するものの必要だが、ムラサキツユクサ的な環境依存の、いわばハマっている存在感も必要なのだ。遠くから見てもわからないのだが、しかし全体の中にあって、確実に彩りを与えている存在が重要なのだと思う。

緑のトンネルはいつ見ても、調和の一つのモデルだ。上を見上げると、空がチラホラと見えるのだが、ポッカリと穴が空いていることは稀だ。Photo_23同様にして、高いところから下をみれば、地上の広がりのなかでも、地面が露出しているところはほとんどない。むしろ全体はスカスカであっても、ほぼ万遍なく覆っている。けれども、混雑していない状況を作り出すと同時に、すべてを網羅している。調和という言葉が当てはまる状況があるとすれば、これを除いてはない、とも言える状況だ。

Photo_8 そして、その緑のトンネルのしたには、そのトンネルに保護されているかのような低木の雑林や、底層の植物群が生えている。そのなかにあって、今年も、写真にあるようなフシグロ仙翁は、底層の草ぐさが単調に陥りがちになることを何とかくい止めるために、そっとした配慮としての控え目の問いかけ(humble inquiry)を林の中でも見せている。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。