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2011/07/11

黄薔薇

家を出て、千葉劇場を目指した。乗るのは、京成電車なのだが、人家の間を縫ったり、土手の中を走ったりして、街中の洗練された電車というよりは郊外型の路面電車の雰囲気だ。千葉中央から歩いて、劇場を目指した。「家」をテーマにした映画が続いている。映画「お家をさがそう」は、妊娠6カ月をむかえた主人公ヴェローナが夫であるバートと家さがしに出かけるという話だ。けれども、家を見つけることは、結局その人のすべてを明らかにすることになるということだ。

ロードムービーの形をとって、コロラド州から、フェニックス、ツーソン、マディソン、モントリオール、マイヤミをたどって、最後は見捨てていた母の家に辿り着く。これだけを観れば、「青い鳥」童話の現代版ということになってしまうだろう。結局、Homeというものは、身近な所にあるものなのですよ、ということだ。

けれども、ロードムービー形式をとったことで、バートとヴェローナたちは最後にHomeに行きつくが、妹やいとこたちが、いかにHomeに失敗しているのかを見て回ることになる。また、自分たちの内面もさらけ出すことになる。バートは、じつは「保険の保険」業見習いで、常に客からの携帯電話を手放せない。けれども、いとこの夫が「脅迫業」を行なっていることで、自分の仕事を見直すきっかけをつかむことになる。家と仕事は切り離せない関係にあるのだ。

Photoさて、劇場から数十メートルのところにある千葉市美術館では、「橋口五葉展」を行なっていて、じつは先日観たところだったのだ。だから考えてみれば、このところこの暑さにもめげずに、千葉市の中央部を歩きまわっていることになる。五葉展では、今回幻と言われていた「黄薔薇」が展示されたのが、呼び物だった。日本画から油絵、さらには浮世絵に至るまで、広範な技能を発揮した画家だ。

まず、目をひくのは、夏目漱石の本の装丁である。また、泉鏡花の本の装丁も、とても綺麗だ。とくに、夏目の「吾輩は猫である」には数点の橋口五葉による装丁本があり、それぞれの猫が面白い。デザインされた文字も良いし、全体の意匠も古典的で落ち着いている。やはり、大衆の動向を、ちょっと進んで掴むのがうまかった画家だと思われる。

記憶に残っているのは、三越呉服店の日本美人画ポスターで、懸賞広告画として1等を受賞した作品だ。杉浦非水に続いてもおかしくない技巧を発揮した。そのころと同じ画法にしたがったのが、上記の「黄薔薇」で平板さをPhoto_2追究した、綺麗でたいへん目立つポスター絵だと思われるのだが、不評であったということだ。それでたぶん、この分野から撤退することになったのだと推測される。その後、浮世絵に転じて、涼しげな傑作「髪梳ける女」や「化粧の女」を制作して、大正時代の浮世絵を究めたと言ってよい作品を送り出した。

Photo_3お昼は、美術館の最上階にあるレストランで食べる。窓からは千葉市をずっと遠望できる。それにもまして、ランチが美味しい。写真に写っているのは、和風ハンバーグである。ところがハンバーグの下に、白いものが見えるであろうか。これが、大根なのだ。和風も極まっている。

ひとりで食べるのが惜しいくらいだが、窓に向かって、一人で座る席がたくさん設けられているところを見ると、やはり映画帰り、美術館帰りの女性たちがひとりでそっと食べていくのだろう。Photo_4さて、午後からは仕事が待っている。今日は先生方も少ないと思われるので、近くのM菓子店で小さなアップルパイを購入して、幕張へ向かう。


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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。