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2011/07/17

最後まであきらめず

Photo毎夏の恒例となった、大学院合宿が始まった。学生の発表が40名ほどになり、2日間では収まらないので、3日間を費やすことになる。16日は気温が40度に達するかと思えるほどだったが、その熱波の襲来している幕張のセミナーハウスに集合した。

合宿の目的は、二つある。ひとつは、それぞれの発表を行うなかで、他者との違いを際立たせ、自分の独自性を強調し、できれば、論文作成の勢いをつけることができるというものである。異化効果だと言っても良いだろう。自宅でモンモンと悩んで論文作成するのも、良い方法だが、それにもまして、論文作成は比較して、それ以上の効果を得ることが大事だと思う。とりわけ、先生方の同意が得られるならば自信を得ること間違いなしだ。

参加していた同志社大学のN先生が良いことをおっしゃっていた。放送大学の学生は、すでに個人的な歴史を持っていて、取り柄がはっきりしているという利点があり、これを最大限引き出すことが良い論文につながるのだと。

もうひとつは、他者との間で、一緒に論文作成を作成しているんだという思いを持つことは大切だと思う。応援、支援というべきか、集団効果というべきか、そこに社会的な関係が生ずることが起こる。今まで、ひとりだけの作業だったのが、突如として、共同作業を行っているかのような感覚がそこに生ずることになる。この周波数をいかに掴むかかが、実際のところ重要なことかもしれない。

このことは、実質的なことでなく、フィクショナルなことであると考えている人もいるかもしれない。けれども、実際にこの過程に入って見るとわかるのだが、いわば一緒に乗合バスに乗った気分になるから不思議である。同じ乗合バスでも、それぞれの目的地はちがうにもかかわらず、共通の気分が生まれるのだ。それが一種の義務感にまで高められれば、教師にとっては思いがけないボーナスとなるが、学生にとってはもしかしたら、良い意味での重荷になるかもしれない。結局は集団効果はいえ、自分に関わってくるところへの関心に過ぎない、と最初はみんな思っていたが、実際に体験してみるとどうもそうではないらしい。

宇都宮市の路面電車新設運動を繰り広げているOさんは、ユーロッパ型の既設路面電車と比較して、宇都宮の場合に何が足りないのか、ということを報告していて、当初は路面電車であるから、設備の問題であると考えていた傾向が見られた。けれども、最終的には、大きな問題に突き当たったことを報告している。つまり、宇都宮の人びとの間での「路面電車」的なものの存在あるいは存在可能性である。ヨーロッパでは数世紀重ねて路面電車を維持して行くという習慣が成立した。この習慣の在り方じたいがじつは重要であるのだ。さいごは「公共」という表現を使うらしいが、路面電車的な「公共」というものがいかに描かれるか、大いに期待している。このような認識に到達できることも、ゼミナール効果といえると思われる。

さて、この二つの効果の両方を得られた人は少ないかもしれないが、そのあとの懇親会を含めれば、この効果もよく浸透するかもしれない。なでしこジャパンの頑張りが、ゼミを行っている三日間のうちに現れた。優勝したニュースが途中伝わったが、その顰みに習うとするならば、「最後まで諦めない」、という澤選手の言葉こそ修士論文作成でも求められていることだと思われる。うしろで肩を組んでいるという集団効果を表す名文句だな。集団効果のなかでも最も文字になり難いものだが、見事にものにしたのではないかと思う。歴史的な壮挙と比べれば、論文作成は小さなことかもしれないが、同じ文脈が流れていることは間違いないだろう。


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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。