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2011/06/22

温泉三昧

Photoこのところ、本を読んでも、展覧会へ行っても、別府の話がどこにでも出てくる。ある年齢に達した人がかならず行く場所として、別府が存在するらしいことがわかってきた。たとえば、妻から借りて読んでいる須賀敦子のエッセイでは、阪神圏の人びとが新婚旅行に選ぶ場所として、かの地があることが知れる。

Photo_2また、駅の北側のゆるやかに続く坂道を登っていくと、いつの間にか邸宅街を歩いていることに気づく。火山から噴き上げられ、坂道を転がり、川に洗われた岩たちが塀として積み上げられ、それ相当の大きな面積を区画していて、Photo_3人生で成功を収めた人たちが、余生を過ごそうと作った別荘や、公共施設、図書館、児童館がどっしりと並んでいるような街が急に目の前に現れるのも、別府の街らしいところである。

Photo_4今日は雨も止んで、朝日を見せ始めている。駅前からバスに乗り込んで、先日見た最多の湯煙の中心、鉄輪温泉へ向かう。直前まで添削に余念がなかったのだが、この通信添削の束も後すこしとなって、どうやら期限に間に合いそうである。日本全国から集まってきた通信問題が、さらに温泉を旅して、学生の方々の元へ帰るのだ、と考えると、温泉の香りを付けたくなるが、やはり答案は神聖かつ冒すべからざるものであり、おいそれと持ち歩いてはならないという不文律があり、金庫にしっかりと保管して出てきた。気分だけでも、仮託することにしよう。

Photo_5鉄輪温泉には、大小さまざまな宿泊所が並んでいて、たとえばバスを降りたところに「いでゆ坂」という名称の石畳の小道があり、その両側には、民宿風の小さな宿舎が並んでいて、長逗留するには、このようなところが良いのだとわかる。骨董屋さんがこのようなところには散らばっていて、観光客の虚栄心をくすぐる。

Photo_6H温泉に入ることにする。砂湯が特徴であるときいていた。風呂番がいて、スコップで砂をかけてくれるものと思っていたが、いまはセルフで行うらしい。砂湯に入る前に、すでに汗をかPhoto_7かせる仕組みになっているのだ。腰から温まっていく。次に、お腹の芯が温かい。腕にきて、足に来て、そのころには、全身からどっと湯水のような汗が出るのだが、砂地がいとも簡単に吸い取っていく。ミイラ状態になるのも、間近になったころ、砂を落として、浴衣と紙の下着を脱ぎ捨てて、露天風呂に入るのだ。

Photo_8この後は好みなのだが、ひようたん湯、檜風呂、岩風呂と続くが、なんといってもお勧めは「打たせ湯」だ。写真で見るように、何の変哲もない上から湯がおちてくるだけではないかというのは簡単だが、ちょうど落下を始めて、肩に届く頃に重力が神の力を加えて、肩に作用を及ぼすのだ。肩こり症のわたしPhoto_9にとって、この打たせ湯が自然法則から精神法則を解放するものとして働く調和の気分を与えてくれるものであった。

Photo_12太陽が出てきても、すでに出る汗もないほどに、すっかり毒素を吸い取られて、にわかに昼食を求めるモードへ入りつつあった。

別府の街には、すでに減価償却を終え、十分に元をとって、それでも余裕があって利用されている建物がたくさんある。経済衰退期の有効なモデルである。そのひとつ、喫茶店「アホロートル」へ入る。

Photo_13バッハの無伴奏チェロが聞こえてきた。ここでは野菜カレーを食べた。写真のように、目に鮮やかなカレーだった。もちろん、美味しいのだが、ふつうカレーはご飯用にかかっているのだが、ここのカレーは野菜用にかかっている。別府最後の珈琲もじっくりといただく。

長屋の二階に厨房をはさんで、日本間と洋間の部屋があって、公共空間として申し分ない。切り離されていると同時に、なんとなく聞こえてくる「圏」を構成している。これは街全体がこの雰囲気を保っていて、観光客というよそ者をたくさん受け入れると同時に、町内会の堅固な組織「組」や「班」も維持されているらしい。Photo_10これだけでも稀有な街なのだが、それが衰退しつつある街なのかと言われると、そうではなくなんとなく豊かさも感じる。衰退の歯止めとなるような、幾多のものがまだ相当残されているらしい。

Photo_11さて、なごり惜しいが別府の街ともお別れだ。N事務長は、わたしたちを「別府冷麺」の店に昨日連れて行こうとして、残念ながらその店がお休みだったのだ。冷たいスープに腰のある麺であるという、まぼろしの別府冷麺を楽しみに再来を期待しつつ、街を後にする。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。