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2011/06/20

別府の街歩き

Photo_10別府の町歩きに、ようやく陽が頂上を極めるころ出発した。温泉に入りたいのはもちろんではあるが、雨が降り続いていたり、午前中に通信問題の添削を行なったりして、機会を逃してしまった。けれども、別府の街そのものに関心があった。とりあえず仕事を閉じて歩き始めたのだ。

Photo_14普通、温泉地へ行くと、その中心は源泉のあるところとなる。ところが、別府は湧出量が世界最大級であり、多発的な源泉で有名なところである。普通の温泉地と圧倒的に違う点は、中心地が複数あることだ。別府八湯という言い方は、もちろん数えれば、鉄輪温泉や観梅寺温泉、明礬温泉などの八つの主たる源泉があるのだが、ヤマタノオロチがそうであったように、多様な混沌がここには含まれており、多様だからこそ、そこの特有の固有性の存在することも示していることだろう。Photo_29山側に5つ、海側に3つということになっているが、そのなかにも他の地方であれば、当然中心地を占めるくらいの立派な温泉が無数に存在する。無料や100円という入浴料の温泉が至る所に用意されている。

宿舎を出ると、別府の繁華街である北浜なのだが、そこにヨットハーバーと公園があり、かつてフランス大使だったP.クローデルが2度ほど訪れたという石碑が立っていて、詩が掲げられていた。

Photo_11神は細部に宿るという、ひとつひとつの街の中心を観ていくことにする。つまりは、近くの温泉から攻めるのが鉄則である。ホテル近くに、竹瓦温泉という、かなり古い建物が残っており、ここから始めることにした。ところが、隣接した地域が、朝から風俗の店であり、客引きがたくさんいて、白昼堂々次から次へ声が飛んでくる。ちょっと通りを通り過ぎるだけで、5,6人から声を掛けられるのには参った。温泉には朝風呂という伝統があることは承知しているが、ここまで拡大されていると、不景気のせいなのか、それとも、伝統の為せるわざなのか、疑ってしまうところである。いずれにしても、需要がなければ、こんなに手の掛かる競争は行わないだろうから、そこそこの客がいるものと推測できる。

Photo_12竹瓦温泉の看板である「砂湯」に触手を伸ばしたが、まだ歩き始めたばかりだったので、遠慮して、温泉地の横丁歩きに精を出すことにする。多くはシャッター街を構成しているが、それでも大工が入って、再生を模索している部分もあり、この入り組んだ有機的構成を維持しているところは、まだ活力を失っていない、というより、むしろ衰退と再生に慣れているという印象だ。

Photo_16横丁歩きのジグザグで、途中市民浴場も見ながら、やはり温泉に入らねば、と念じつつ、横目で見ながら別府へ来た甲斐がないなとおもいつつ、駅を越えて、北側へ出る。山に向かって急な坂道がずっと続く。噴火山のマグマが扇状地を形成したとのことだ。万遍なく同じ傾斜の坂道が続く。そこを格子戸状の道路が行き交う。

Photo_15目的地は、レンガ建ての素敵な建物。これは京都大学の「地球地熱研究施設」である。歴史ある施設らしい。塔が顔のように見え、手を延ばしているように、建物が広がっている。一応、パノプティコン作りになっているが、見た目の感じは、童話から抜け出して来たおもちゃの建物のように見える。3宮沢賢治の童話で、みんなのために犠牲となる「グスコーブドリ」の務めていた火山局は、こんなに立派ではなかったかもしれないが、最初に見た時にこれではないかと感じてしまった。おそらく、火山局と同様にして、この研究施設の施設や思想は、この建物と地下を通じて世界とつながっているのではないだろうか。Photo_20これを少し小さくしたら、映画「グスコーブドリの伝説」のセットに十分使えるものになるのではないかと想像逞しくしてしまった。地域の小さな研究施設が、じつは大きな世界と繋がっているという想定は、小説的な在り方だが、ここでは現実的な気がする。

街歩きも今日の最北端まで来てしまったので、あとは転げるように惰性でどこへでもいってみようという気分になった。ひとつの目的さえ達してしまえば、あとは余裕である。

Photo_17目の前に大きなタワーが見える。ガラス張りのビルへ入ると、上まで登ることができるとのことである。高所恐怖症なので、ちょっと躊躇したが、エレベーターの速度はわたしの判断を上回っていた。このタワー側面は、地球全体の表面の一部を象徴的に表しているらしい。

Photo_19地元の人はこのような別府がどのような形態をしているのかは興味がないことはよくわかる。けれども、観光客にもまったく宣伝していないのは勿体無いと思う。地元の人びと以上に、観光客には受け入れられるのではないかとおもわれる。

Photo_18南に向かって別府湾が水平に開け、なだらかな坂道で市内全体が、展望できる。さらに、北には山が連なり、その谷群それ毎に、白い煙が上がっている。Photo_21この煙の数が半端ではない。景色の中に動くものが存在し、それらが地域の中心を表していることを示しており、壮観な眺めである。これらの湯けむりの最大規模のものが、鉄輪温泉であるとわかったので、いずれ訪れたい。

Photo_22戦後進駐軍が駐留していて、現在は綺麗で広大な公園になっている「別府公園」を越えて、隣接する喫茶店「グリーンスポット」を訪れる。雨は相変わらずポツポツと止まない。苦味系を得意とする、御三家タイプの美味しさを追求している焙煎屋さんである。店内にはダッチコーヒーの立派な装置が置いてあった。地元の客が仕事の合間にちょっと息抜きするということで、来店するらしい。こんなにわかりにくいところにもかかわらず、美味しさだけで客が来るというのは喫茶店冥利につきる。

28夕食は、地元の人びとが通う「N」へ入る。Photo_23入口が二つあるような、かつての造りが二重になってしまったような、わけのわからない構造の玄関から入ると、Photo_24ドンドン太鼓が鎮座している。昔は、客がはいるたびに鳴らしたとのことだ。テレビを見ながら、客同士おしゃべりしながら、カウンターで食べる。今日一日、別府の街を振り返りながら、焼酎のお湯割りを注文する。Photo_25きょうの料理はとり天、刺身、砂肝、そして野菜少々とだんご汁。Photo_26昼間めぐった小道を縫うように、アーケードを歩いて帰る。出口にあるジェラートの店「G」でアールグレイのアイスクリームを食べていると、北浜の魔法使いが、箒にのってやってきた。

Photo_28別府の街は、温泉を豊かさの根源として、温泉中心に自然に発達しているところに強みがある。だから、繁栄しすぎたところが、たとえ衰退期を迎え、シャッター街が多少目立つようになったとしても、まだ十分長く耐え得ることができる構造を持っている。Photo_27しぶとさとユーモアの余裕が感じられる街だった。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。