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2011/06/09

男泣きあるいはMy Back Pages

「その頃はずいぶん年取っていて、今はその頃よりずっと若い」と言える時代に、果たしてわたしたちは入ってきたのだろうか。それでもやはり、今の方がずっと年取ってしまったと感じている若い人もいるのだろうか。自分のことを考えるにつけ、わたしたちは過去を振り返って見ることがいかに苦手としているのかということだと思われる。

午前中、幕張での仕事を終え、追ってくるものは夜にまわして、東京駅近くの丸善で早矢仕ランチを食べる。じっくりと読書をして長居のできるとこなのだが、今日は図書館で探し物があるので、1時間くらいで退散する。W大のT図書館は社会科学関係の洋書所蔵に秀でていて、他の図書館ではない本が分類鮮やかに存在する。多様性、インフォーマル、制度などというキイワードで出てくる書棚をずっと見て行く。本来の ブラウジングを行なった。最近はコンピュータでかなりのことができてしまうが、やはり本の中身を見ながら進めたほうが良いことに間違いない。しかも、ここには研究者専用のかなり広い閲覧室が用意されていて心地よい。

目的の本が数冊手に入ったので、となりの博物館でたまたま催されていた富本憲吉展を見る余裕が出来た。斜線模様を描いても、撫で肩の壷を作っても、藍色の版画を描いても、すでにこの時代にして、後々民芸運動によって追求された上品な民芸調というものを確立している。この後に世に出た人たちはとても楽であったと同時に、これを乗り越える時には苦労したのではないかと想像させられる作品群である。とくに緑と茶色の鮮やかな模様は独特の世界だ。

Photo講義を終えて、ロビーで休んでいると、O先生が現れて、雑談する。しばらくして、冷たいもので喉を癒しましょうかということになって、キャンパス近くのF喫茶店へ連れて行ってもらう。写真は、甘党のO先生がクリームソーダで、わたしがコーヒーフロートを飲んでいるところである。O先生のブログでも、同じ写真を反対側から見ることが出来る。

教員ロビーで見掛けたセクハラのビラに話が及んで、最近は先生が学生の相談に乗る時に、研究室のドアを開けておく人が多いんですよ、とおっしゃる。放送大学は、社会人の大学なので、あまりそれは意識したことがないが、一般の大学だったら、今や常識になっているじゃないですか、というと、じつは最近女学生に良く泣かれるんですという。ほう、と身を乗り出すと、イヤ就活ですよとのこと。この時期になってくると、進退極まってきてしまう学生がいて、しかし、泣いてしまうと生理的に落ち着いてスッキリしてかえっていくのだそうだ。

そうなのか、生理的な泣きということは、良いかもしれない。もちろん、女性にとっては、単なる生理ではなく、精神的には感情的な泣きでもあるのだと思われる。これをドアを開けたままでやったら、やはりまずいだろうな。ドアは必要である。さて、女性はこれで済むとして、それにしても男性は泣きませんね。ぐっと顔を上に上げて深呼吸をしてしまえば、なんとかなってしまう。どうも詰まんないですね、という話の向きになった。

映画「マイ・バック・ページ」は、男泣きの映画だという触れこみだったので、厚いハンケチを持って臨んだ。でも、残念ながらそういう泣き方ではなかった。もちろん、感情的になって泣くこともないことはないが、どうも厄介なのは、なぜ泣いたのかを知りたいと思ってしまう点だ。無条件で涙が流れてくるということはないらしい。ほんとうに厄介な物をもっているのが、男性なのだ。

この映画「マイ・バック・ページ」では、途中男がなぜ泣くのかという話が、数回出てくるが、それは最後への伏線に過ぎない。これを読んでも、おそらく解釈はすべての人によって違うから、ネタバレにはならないと思われるが、一応警告だけは出しておこうと思う。

重要な点は、男泣きというのは感情として生ずるのではない、ということだ。それではなぜ男が泣くのかといえば、悔しいということだ、というのがこの映画の解釈だと思われる。悔しさや後ろめたさというのは、立派な感情だと言えなくもないが、反省という要素が入っている分だけ、理性的な感情だと思われる。

さて、最後にどんでん返しの落ちが待っていたのだった。驚かされたのは、O先生の特性である。映画館で私は良く泣きますが、じつは右眼からしか涙が出ないのですという。あまりみっともないので、暗い映画館から出る時に、人に見られたくないのだとのこと。凄い。左は男性で、右が女性なのだ。両性具有でなければ、この社会では生きられなくなっていることは理解していたが、その実例がこんな近くにいたとは。


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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。