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2011/05/19

くび長の黄色いたんぽぽ

Photo朝から気温が20度を超えた。通勤で30分くらい、公園を歩くところがあるのだが、この程度の歩きでも汗が噴き出てくる。この公園では、たんぽぽが乱れ咲いていた。首を長くして、この太陽を待っていたらしい。写真のように、異常なほど、くび長のタンポポで、黄色い花をつけて、いっせいに風で揺れていた。ひとつひとつの黄色い花が、それぞれ個性を主張して、草の中から抜け出してきた、という雰囲気だった。

Photo_2放送大学は発足当時から、学際領域を発達させることを大学の理念に掲げていて、カリキュラムのなかでも、「基礎科目」や「総合科目」は学際的・超学的な工夫を行なった授業科目が集中しているところだ。これらの学際的な科目は、さきほどの黄色い、くび長のたんぽぽのイメージなのだ。

今日は、どのような構成にするのかを話し合う委員会に出た。この委員会にはずっとかかわってきている。こんなに続くと、そろそろ任期も最後のころに近付いているのではないかと思われる。学際とは何か、基礎とは何か、総合とは何か、これらはどういうことを言うのか、ということを何年にもわたって、議論してきたような気がする。

Photo_3お昼まで、この委員会に出て、さらに職員の方と懸案を議論し、早々に切り上げ、W大へ向かった。今年はじめてW大で講義を受け持つのであるが、東日本大震災の影響で、5月始まりとなっていたのだ。今日はしたがって、新年度になって、ようやく2回目である。

「現代人と職業」というたいへん魅力的なテーマだったので、お引き受けしたのだ。このテーマではかならず避けて通ることができないOという社会学者がいる。じつは大学院生時代に駒場で図書室のアルバイトを行なっていて、夕方から夜にかけて、一人で一室の管理を任されていた。そこにO文庫があって、生前収集された書物がぎっしりと積み上げられていた。ちょっとページを開くと特徴ある書き込みがいたるところに行なわれていて、書き込みだけを読んでいった記憶がある。

前回は「職業とはなにか」を話した。職業と、労働や仕事との異同などが中心的なテーマだ。講義の最後に今回のための資料として、職業としての「石工」へのインタビューを配っておいた。

なぜ「石工」なのかというのは、学生からも問われたが、正当な質問だと思われる。英語で石工は、masonと書かれるが、これは「作る」makeを語源とする。制作にかかわる最も原型の職業として、石工を取り上げたのだ。それに、このインタビューの内容は、有名なH・アレントの「労働と仕事」の区別を、それこそ絵に描いたようにわかりやすく奔放にしゃべってくれているのだ。

W大の学生たちについては、現在までのところを見た感じでは、多様な個性が集まっている、という印象だ。生意気だとか、派手だとか、という意味ではけっしてない。程よく抑制が効いた個性であるところが、たいへんこころ憎い。これはかなり褒めているのである。

Photo_4たとえば、「石工」についての職業上の特徴を追究してもらうために、グループ学習を行なってみると、それがあらわれる。通常のグループ学習は意見を発表し合って終わりにしてしまうのだが、今回はそれを2,3回練り上げる工程を設けてみた。他の大学で試してみると、練り上げる工程で、意見が次第に集約されてきて、クラスの共通点が如実に出てくる場合が多い。ところが、今回のクラスでは、共通点は見事に出てきたのであるが、その表出が多様な表現を保持してけっして集約されないのだ。この演習授業では、学生が多くの職業を見て、多様性を受けとめてもらいたいと考えているので、このような個性的な多様性は好しとしたい。じつはここでも、今朝のたんぽぽを思いだしてしまったのだ。

Photo_5気温が高いせいか、汗となって出て行ってしまったせいなのか、理由はともあれカフェ・Gで濃厚なコーヒーと洋梨のタルトを注文する。カウンターに座っていると、店全体から湧き出した会話が風に乗ってやってきた。これにもまた、黄色い、くび長たんぽぽのイメージが重なる。今朝の公園にいる気分をしばし思いだし、楽しませてもらった。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。