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2011/02/14

産むという関係

三連休は雪で出られないということだったので、月曜日まで伸ばして、ようやく外へ出た。というよりも、外へ出る元気もないことを理由にして、仕事のほうを進めたというのが実情だ。わたしの基準からすると、ちょっと勤勉すぎる気がするが、世間から見ればこのような生活は怠惰なのだとみられている。

今日の毎日新聞に、英カーディフ大の調査が載っていた。それに依ると、現代の日本人には「子どもが欲しい」という欲求が他の国より低い傾向にあるということだ。

ちょうど菅野美穂主演の「ジーン・ワルツ」を観ようと思っていたところだった。現代の産科医を取り上げた作品で、4例の妊婦を描いており、同時に大学病院の医療体制の問題も扱っている映画だ。

近くの映画館ではすでに朝の一番の時間しか上映していない。ということは、客が少ないということなのだが、このようなものに佳作がときどきあるので、理由のある客の少なさは、気に留めずに出かけることにしている。

「ジーン・ワルツ」が映画として、良い映画かと問われるならば、映画にクールさを求めているわたしとしては、映画的な跳躍が存在しない分だけ、チョットな、というところがある。けれども、テーマがテーマだけに、シリアスになってしまう部分が残ってしまうことは仕方ないところだろう。極めて概念的なところがあるかと思えば、お産のところのように現実的なところがあって、これは評価の分かれるところだろう。

この映画を観て思いがけないところがあるのだが、それは外側からくる、映画的跳躍の部分ではなく、わたし個人の内部を覗くような、映画によって記憶が掘り起こされるような部分なのだ。妊娠やお産のシーンになる度に、わたしの娘や息子についての過去の記憶が思い出されて仕方なかった。

「子どもを産むということは、ひとつの奇跡だが、この奇跡は日常に数多く起こるものだ」という、この映画の主旨はわかりやすい。自分の経験からして、自分の子どもが生まれてきたのはほんとうに奇跡だったと思う。けれども、この感動は、今から省みると自分にとって特別のものであったのだが、ちょっと唐突かもしれないが、冷静に考えてみると人類共通のものでもあった気がする。

自分のことで恐縮だが、結婚したのが遅かったので、じつは子どもが授かるとは思わなかった。この映画のなかでも、4人の患者が出てきて、出産にまつわる様々な問題を見せてくれる。高齢出産の問題は、ひとつの焦点になっていた。当時、わたしの友人たちも、高齢出産のことで情報をたくさんもたらすので、かなり厳しいことに陥った。そんな記憶も、数十年も経っているのに、急に思い出された。このような記憶からしても、二人も子どもが生まれたことは奇跡だった。病院にタクシーで乗り込んで、待合室で待つというときには、どんな仕事もほっぽり出して、永遠の時間に身を任せたい、と思ったことも、ようやく思い出した。三木卓の詩を口ずさんだこともあったことも。

こんな記憶を思い出させてくれるということは、ほかの映画ではほとんどないことだろう。なかでも、5分間の生命のために産む、という話は、特別な思いでみてしまった。もちろん、映像としては難しかったが。これから、子どもを産む人も、過去に子どもを産んだ人も、さらには、自分の子どもはいなくても、社会で子どもが産まれてくることを実感する人にも、これを観ると自分のなかで、何かが起こるかもしれないと期待させる映画だと思う。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。