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2011/01/01

「ガレット・デ・ロア」という新年を祝うケーキ

実家に久し振りにみんながあつまった。昨年は、母の入院という事態があって、次から次へさまざまな事件が重なった。それで、正月どころではなく、また仕事が仕事を生み、休みのない、カレンダーを捲るだけの一年が始まったのだ。

休みのない状態は相変らずなのであるが、心の状態が矢張り違う。

Photo 今日の事件は、ケーキである。モノ自体が事件を引き起こす事などないと思われるかもしれないが、じつは幾重にも重ねられた行動や習慣が微妙に食べる人に影響を与えるようなケーキなのだ。フランスに、「ガレット・デ・ロア」という新年を祝うケーキのあることをはじめて知った。そのケーキを妹夫婦が持ってきてくれたのだ。義弟の会社がさる西洋菓子ブランドの会社なので、そこのケーキを持ってきてくれたのだ。

Photo_2 フランスは、家族を重視する伝統がヨーロッパのなかでも強いことが知られているが、それはこのケーキを味わえば、よく理解できる。つまり、このケーキは家族を前提として作られている。もちろん、家族でなくとも、友人同士で良いのであるが、ここに、ひとつの遊びが隠されていることが大切である。それは、抜群の習慣であり、家族を思わせるのだ。

ケーキのなかに、フェーヴと呼ばれるものを胎胚させるのだ。フェーヴは、そら豆を意味するようなのだが、これ自体きわめて隠喩的だ。そら豆は、ご存知のように、胎児のかたちをしている。このようなレトリックを楽しみながら、遊びに昇華してしまうところが、フランス的なユーモアなのだと思われる。フェーブの食べ当った人は、王様になるので、このケーキには王冠が付いてくるのだ。この遊びを行うことで、正月から楽しい気分になる。

Photo_3 もうひとつ、このガレットにまつわるエピソードがあって、それも新年に相応しい寓話だとおもわれる。ギフトの原点を提供しているのだ。このガレットが共されるのは、公現節を祝うとされており、キリスト聖誕を祝福するために、東方の三博士がやってきて、贈り物をすることになっているのだ。博士というから、知識を授けたかといえばそうではなくて、薬と授けるのだ。

薬というのは、寓意であって、親切や優しさということに違いないだろう。三というのは、おそらく重要で、三はたくさん、つまり社会を意味していることはほぼ確実だ。キリストは社会を代表する三博士によって祝福されるのだ。また、三に一を足して、めでたく充足の四となるのだ。それは当然、のちのちキリストは神との媒介をして、万民へ贈り物を返すことになり、めでたく社会の連環は完結することになることを現わしている。

Photo_4 ケーキは、上品な美味しさだった。アーモンドクリームがたっぷりと薄く入っていて、パイが全体的に引き締まっている。軽やかさは、贈り物を表しており、パイ生地とのコンビネーションは社会の重層性をあらわしている。つまりは、ガレットは家族という小宇宙に必然的に生まれた菓子であると言えるのではないか。ほんとうは、1月6日に食べるべきなのだが、キリスト教徒ではないので、お正月のお菓子として、有難くいただくことにしよう。身内にお菓子屋さんがいる幸運に感謝して、もちろん義弟に感謝して。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。