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2010/05/30

核心は見えないが重要なこと

中心にあるものがなんだかわからない。なにかそこには重要なことがあるのだが、どのように考えても、もっとも肝心なところは見えてこない。なんだろうか、それは。

と、いうような不思議な感情を持つことはないだろうか。このことを楽しむことができるようになったのはいつからだろうか。それは、ある時間のうちには答えは見えてこないが、そのことに対して、何らかの答えを見出すことが意味あることに見えてくる。

たぶん、世の中の多くのことがこのような疑問だらけの状態に置かれていて、それに安易に答えを与えてしまうと、そのことを理解できなくなってしまうのだろう。

まわりをめぐって、いろいろな事件を経て、すこしずつ中心へ近づいていく。このようなやり方が好ましくなったのは、やはり年を取ったからだと率直に思いたい。

新潟に来て、最後の夜を迎える。講義が終了して、学習センターでお世話になったTさんともうひとりの方がいて成績評価簿の受け渡しを行なった。雑談のついでに、新潟の美味しい料理の店と、古い喫茶店と、さらに映画館を推薦してもらった。

ちょうど時間がよくて、映画館へ行くのにワンコインバスに間に合った。バスセンター裏にある市民が運営している名画座「シネウインド」へ滑り込む。前の回がちょうどはねたらしい。座席もシネコンのような大そうなものではないが、こじんまりした素敵な映画館だ。環境音楽で潮の音が流されていて、朝からずっと続いた講義のつかれが、潮とともに、流されていく。そして、周りからようやく体の中心に向かって浸透していくのを感じた。

映画「ずっとあなたを愛してる」という題名の意味は、映画を観終わらないとわからない。本質は確かにそのとおりなのだが、もうちょっと洒落た題名は思いつかなかったのだろうか。つまり、愛そのものが中心にあるのだが、それは愛と言ってしまったら、なにも伝わらない。

映画の始まりは、空港に到着した姉がひとりで待っていて、迎えに急ぐ妹がそれにオーバーラップして、再会する場面だ。映画全体は結局、本質的には、この最初ですべてが描かれている。ひとつの隠された愛と、もうひとつの妹が姉にずっと感じてきた愛と両方の組合せで構成された映画なのだ。このふたつの愛は最初だれにも理解されないが、妹の夫の控え目な配慮と理解、さらに子供のおばに対するコミュニケーション、保護観察のソーシャルワーカーとの付き合い、警察官との交流、工場主とのやりとり、どれをとっても丹念に描いていると思う。

周りをめぐって、十分に描きつくすことで、最後に中心がぐっと見えてくる、そんな映画だった。それにしても、母の愛というものは深いのだ。15年という年月は一つのことを思い続けるには、十分すぎるくらい長い。

Photo バスセンターから宿泊地のほうへむかうバスがあと1分でくるというタイミングの流れに乗って、学習センターで推薦してもらった料理店へ駆けつける。ここで、すでに夜も深くなっていたので、わたしがほぼ最後の客だった。広い店内はガラスを多用してあって、中庭にたっぷりと余裕を感じることのできるように工夫されている。外見は木造の古い洋館を再利用したものだが、内は開放感あるシンプルさがデザインされていた。

料理もおいしくて、最後は苦味系のコーヒーを飲んで、一日の反省をじっくりと行なった。女性客が多い店らしく、肉料理を頼んだのだが、野菜の多い構成だった。静かな街をひとりで歩いて帰ると、照明が店内を照らしている店が並んでいて、また訪れても十分受け入れてくれそうな街の顔を示しているような気がした。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。