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2010/04/01

ジャムのカップリング的世界

小さなときから、どういうわけか、ジャムに興味がある。ジャム自体が好きだというよりは、むしろジャムの世界が見せてくれる、多様に「結びつける力」に魅せられることが意外に多かったと思う。

もともとは山国育ちで、親戚にリンゴ園を開いているおじいさんがいて、果物が身近にあったことが幸いしている。リンゴ畑にいけば、さまざまな種類のリンゴがなっているだけではなく、桑畑の実や、畑の脇を流れる清流岸には、スグリなどの実がなっていて、酸味が舌を刺激した。

けれども、都市に住むようになって、近所のパン屋さんへ通うようになり、その台所へ出入りを許されるようになって、業務用のジャムが所せましと並んで、バターやマーガリンとの組み合わされた味覚を、コッペパンに乗せて楽しむことを知った。

まだまだ田舎のパン屋さんは、今日のような自分で竈をもってるような洒落た店ではなかったけれども、ジャムの魅力が組み合わせにあることを予感させるには十分な経験を与えてくれた。そのうち、田舎では、イチゴジャムや、マーマレードだけでなく、西洋風なブルーベリーなども自家農園で作るようになり、一気に多様化が進んだ時期があったように思う。

今回の尾道出張は、さまざまなところに影響を与えていて、まだその夢の中から覚めない状態にある。記憶を呼び覚ましたり、現実を見つめなおしたりする題材に事欠かない。

Photo 商店街のなかに、3帖ほどの小さな創作ジャムの専門店があって、外から見ても楽しそうな並べ方をしていた。いかにも、ジャムが好きで好きでたまらない、という珍しいほど表現力のある店だ。なにしろ、ジャムの多様さが異常なほどだ。現代がいかに多様な時代であっても、これほどの多様さを保つのは容易ではないことは直ちにわかった。

尾道の街にジャムが珍しいわけでは、まったくない。柑橘類は瀬戸内海の島々からすぐに入ってくるから、どのようなみやげ屋さんへいっても、ジャムは溢れるばかりに並んでいる。それにジャムは素材が勝負だから、このようにたくさんの柑橘類が手に入るならば、ジャムは容易に作ることが可能だ。

固有性が成り立つ、二つの条件のうち、発展可能性に秀でているのだ。もちろん、珍しい柑橘種類のマーマレードはおいしかったし、東北から取り寄せたリンゴのジャムもおいしかった。けれども、やはり創作ジャム屋さんの真骨頂は、多種類のジャム、それも組み合わせの豊富さを実現していることだ。

Photo_2 たとえば、写真に写っている大きな瓶のジャムは、マーマレードだが、なにかが微妙に作用していて、柔らかい味だ。それから、小さな瓶のジャム、「リンゴ畑のジャム」は、ここの女主人自慢の味だそうで、わたしが母へのみやげだ、と言ったら、ただちに推薦してくれた。

リンゴの短冊状をベースにして、小さな木イチゴが入って、さらにハーブの香りがする。これは好評で、あっという間に、食べてしまった。アールグレイ味・香りのついた八朔のジャムもおいしかった。いずれも組み合わせによる相乗的な味わいが素晴らしかった。

妻や母がいつも作ってくれるリンゴ・ジャムも素敵で好きだけれども、今回のような複雑な味のジャムも、昔初めて都会に出てきたときに感じたような異国情緒があって、たまにはよいなあ、と思った。素材の仕入れから、販売まですべて一人で行っているそうだ。またいつか、尾道へ立ち寄って、ぜひこのジャムを付けて、パンをもう一度食べたいと率直に思ったのであった。

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