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2010/02/28

Resistance(抵抗運動)

朝、ひとつの仕事が進んだので、もうひとつの仕事を持って、家を出る。もうひとつの仕事とは、この時期に恒例となったピア・レヴューである。こんにち、同僚の先生方の仕事を、放送教材、印刷教材、通信・試験問題、学生データにわたって、詳細にそれぞれの先生方が検討して、ワープロ4,5枚のレポートを書くのである。

たいへんな時代を迎えているのだ。かつて、大学ではほかの先生の講義を聴くことすらタブーとされていた。それと比べると、隔世の感がある。かばんにデータを放り込んで千葉の人気の無い街へ。大きな傘をさして行ったにもかかわらず、みぞれに近い大降りの雨で、すっかり足元は濡れてしまった。

今日のお目当ては、珍しいデンマーク映画である。「誰がため(原題:フラメンとシトロン)」は、第二次大戦中のデンマークにおけるレジスタンス運動を描いた映画だ。レジスタンス運動の映画と言えば、ワイダ監督の「地下水道」や「灰とダイヤモンド」がよく言及されるが、裏切りと信頼の問題ならば、フランスのジャン=ピエール・メルヴィル監督の映画「影の軍隊」だ。学生時代の内ゲバを見ている者にとっても、仲間だった者を殺すシーンは、いつ見ても厳しい。

レジスタンスにも、北欧型があるのではないかと思う。戦争を行う意味を、個人レベルでどのように考えるか、という深刻な問題を正面から普遍的な問題として描いている。とくに、家族関係が微妙な形で、組織の問題に影響を与えるのは、よくぞ描いてくれたというところだ。妻や父親から、人殺しと追求される。つまりは、インフォーマルな関係をゆがめてしまうところは、詳細に描かれていて、この映画の特色となっている。

フラメンとシトロンは、反ナチスの地下抵抗組織「ホルガ・ダンスケ」に属し、ナチ協力者たちを次々に標的にしていく。そのため、ゲシュタポから、賞金をかけられることになる。

映画のなかで、主人公のフラメンに向かって、標的となったギルバートが言う場面がある。なぜ戦争に加わるのか。(1)出世という個人的な理由、(2)祖国愛という公的な理由、(3)憎しみという相互的な理由をあげる。(3)に近づくほど、泥沼化するのだ。

もちろん、主人公たちの理由は、すでに行動そのものということになっていて、殺人が存在の理由となっており、理由を考える段階ではなくなっている。人を殺す理由の正当化がいかに難しいかということだ。

この話は実話ということになっていて、ほんとうは殺されても正当だと思われる人びとが最終的には生き残ってしまい、正当な理由のなく殺されていくひとたちが容易に殺されていく。これが現実なのだ。この不条理をぎりぎりのところで描いていて、申し分ない。さて、現場に立ち会ったら、どう行動していただろうか。

帰りに、折角もうひとつの仕事を持って出たので、千葉中央駅ちかくの喫茶店で完成させた。母から頼まれた米の計量カップも忘れずに購入した。

昨日から、チリで大きな地震が起こったことが報道されていて、今日になって、津波が日本の太平洋岸に押し寄せてきている。高いところで、3mほどを記録した。じつは昨日偶然にも、母の家で、チリ産ワインを購入したところ、たいへん美味しかった。学生時代にやはり第1波のチリワインブームが起こって、よく飲んだ時期がある。今回は、そのときよりさらに数百円安いワインが出回っている。地震とグローバリゼーション恐るべし。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。