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2010/02/02

散逸した世界をまとめること

自己完結を目指すのが、人間の本能であるという、先人の指摘は認めてきたつもりだが、自分の現実を眺めてみると、そう簡単なことではないことがわかる。怠惰なりに、自分をつなぎとめようとするのだが、そううまくいくことは滅多にない。

母が幻想を語るようになって、それを聴いていると、取りとめもないことを言うなかにも、なんとか自分を何かに繋ぎ止めたくて、語っていることが数多くあってはっとさせられる。

同じレベルで言う事はできないが、一般化できないこともない。いろいろな自分を創って、自分の世界を広げてきている現代人も、散逸した自分の世界をいつかはまとめてみたいと、潜在的には考えるのではなかろうか、という想像をしてみた。

今日は、朝からなんとなく浮き浮きしていて、その理由は、早稲田大学のO先生に会いにいくことになっているからである。わたしのブログはO先生に触発されて出発した。それで、なぜブログを書くのか、ということを考えるときには、初心に帰って、先生のブログを覗くことにしているのだ。

直接会ったからといって、なぜブログを書くのかという疑問が直ちに解決されるわけではないが、話していて、もっとも印象的だったのは、日常を繋いで、輪郭を浮き彫りにするということをおっしゃっていて、そのことは逆に自分に帰ってくるということだ。

ざっと話は飛ぶが、まったくつながりがないわけではない。じつは以前にも書いたように、放送大学叢書の執筆を直接お願いするためにO先生のところを訪れたのだ。「商談」はすぐに成立して、引き受けていただくことになって、たいへん喜ばしい。

なぜ以前の著書を改めて書き直してもらって、放送大学が叢書にしているのかといえば、散らばっている知識を集めて、まとめたいという「大学」というものの本来的な役割を意識しているからだといえる。自分でみてもそうなのだが、他者からみても、あちこちに散らばってしまった世界は気になるものだ。いつかは、まとめて置きたいと思いながらも、結局そのままになってしまうのが、世間の趨勢だ。

ここはお節介だ、と言われようとも、眠っている放送大学の資産を活性化させたいと考えたしだいである。もちろん、放送大学のためでもあるが、著者にとっても絶版になってしまっているものを復刊させるメリットは十分あるに違いない。

ところで、O先生の研究室は早稲田大学の戸山キャンパスにあるのだが、わたしも一度は早稲田大学の入学式のためにここの記念会堂へ来たことがあるのだ。残念ながら、経済的な理由から、他大学へ行くことになってしまったのだが、じつは母を一緒に連れて、クラブや同好会の勧誘に身を任せながら、大学生気分を満喫したキャンパスであるのだ。ちょっと懐かしい。

S_2 大学の校舎を通り過ぎ、裏山の側面に沿って、穴蔵のような丸窓がいくつも並んだコンクリート打ちっぱなしのモダンな研究棟があり、そこにO先生の研究室があった。研究棟の中に入ってしまうと、静かで落ち着いた白い僧院という感じだ。もったいないことに、O先生はここでは原稿は書かないらしい。隣の研究室は、S先生の部屋で、S先生も以前放送大学の先生だった。

途中、近くのカフェ・ゴトーに場所を移して、次の講義までの時間をたっぷりと雑談を楽しんだ。今は、かなり少なくなってしまったが、学生街の喫茶店という雰囲気を味わおうとしたら、ここは最適ではないかと思われる。ちょっと大き目の チーズケーキとコーヒーをO先生にご馳走になってしまった。G_2

なぜ仕事をお願いにいって、逆にお茶をご馳走になって帰ってくるのか、というところなのだが、それは今度はわたしが支払いますよ、という互酬制を知っているもの同士だからこそのやり取りだということにしたおきたい。O先生、ご馳走様。美味しかったです。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。