« オーケストレーションと楽団組織 | トップページ | 言葉にならない現実 »

2009/07/03

職人技のインタヴュー

Photo_9 有田の今泉今右衛門窯へ来ている。180年ほど前の趣のある母屋へ挨拶をして、美術館で打ち合わせをする。でもやはり、仕事場へ入るときがとても緊張する。

Photo_10 仕事場らしいなと思うのは、表の門を兼ねた角張ったアーチ状の入り口をもつ、木造の100年近い建物が母屋に面してあり、道路からこの建物があることで、奥の森閑とした仕事場を確保しているのだろうと思われる点だ。到底、この奥に30人ほどの職人の方々が、息を凝らして磁器と面と向かっているとは思われないほど、静謐な佇まいだ。

なぜか、前に来たときからすでに7年程が経過しているとは思われないほど、変わらぬ姿を見せている煉瓦の煙突が懐かしい。右のガラス戸を空けると、釉薬の置いてある部屋があり、対談のなかで、手作業で釉薬をかける意味を教えていただいたのを思い出す。

そして、隣の部屋では、ろくろの職人さんたちが細工を行っている。今回は、今右衛門さんだけでなく、何人かの職人の方々にもインタヴューを試みた。ひとつひとつ全てが技の凝縮されたものなのだが、言葉にできないところが、熟練たる手仕事の良さであるのだ。そこをあえて言葉にしてもらったのだが、うまく伝わればよいなと思う。言葉にならない手仕事のいわば「暗黙知」ということを実際に感ずることができたのは、このようなインタヴューをおこなうものの役得だ、としか言いようがない。

Photo_11細工、窯焼き、下絵付け、上絵付けと順番に聞いていった。そのなかでも、極めつけの話で、わたしたち用にわかりやすく話を作ってくださったような気がしないでもないのだが。つぎのような話をしていただいた。

線描きという工程で、模様の線の部分を描くところなのだが、その線を均等の幅で描くときに、線を描くのは「筆で描くのではなく、絵の具で描く」のだそうだ。筆を磁器に触れて描いてしまうと、力の入ったところは太く、力の入らなかったところは細くなって、均等の幅を実現することは難しい。そこで、職人の方々は、筆を実際には浮かせて、絵の具がちょっと触れる程度で、筆を滑らせていくのだ。このことを習得するまでの、すこし時間がかかるとのことだった。

Photo_13 かつての完全徒弟制のもとでは、隣の師匠の技を「盗む」より他なかったらしい。こんにちはさすがにそこまでにはならないとしても、伝統の技は無言のうちに伝わっていくに過ぎないのにもかかわらず、ほんとうに確実に伝わるのだ。

Photo_14 わたしがしゃべってもらいたかったと考えていたことの120%を超えて、盛り込んでくださった今右衛門さんと職人の方々へ感謝したい。また、終始付き添ってくださったM氏にもお礼申し上げるしだいである。

« オーケストレーションと楽団組織 | トップページ | 言葉にならない現実 »

文化・芸術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/173786/45692361

この記事へのトラックバック一覧です: 職人技のインタヴュー:

« オーケストレーションと楽団組織 | トップページ | 言葉にならない現実 »

『貨幣・勤労・代理人』(経済文明論)

  • “「貨幣・勤労・代理人」"

社会経営研究配布中

  • 2015study

社会経営ジャーナル配布中

  • 2015journal

開いている講義    「社会的協力論」

  • cooperation

「音を追究する」第13回・第14回

  • art

「多様なキャリアを考える」第2回・第3回・第4回

  • cooperation

「グローバル化と私たちの社会」第11回

  • cooperation
2017年8月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    
無料ブログはココログ

Recommend

プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。