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2009/06/03

藪のなかで迷ったこと

オリバー・ストーン監督映画『ブッシュ』が上映されて、話題にならないまますでに今週で銀幕から下ろされるそうだ。

この監督の『ウォール街』『JFK』をかつてみたことがあるが、きわめて真面目で率直な描き方で、切れが良い画面構成を保っていて、本格派の映像だった。これだけの緻密さを見せるのであれば、もうすこし深みということが在っても良いのではないか、と思ってしまうほど、見終わった印象は意外にも淡白なものだった。それは、この『ブッシュ』でも言えるのではないだろうか。

若い頃の放蕩は有名だが、全編を貫いて共通しているのは、この放蕩に象徴されていることだ。ひとつは父ブッシュ大統領との親子葛藤であり、もうひとつは個人的な執着である。

このふたつの軸はたいへん面白かった。アメリカの政治が、個人心理の葛藤から動かされていくという想定には、すこし無理があるものの興味深いものがある。放蕩生活の失敗や落選やさまざまな失敗がまったく生かされず、あるいは気にもされず、議員に当選し、知事にも選ばれ、さらに大統領に駆け上がっていく、という成功物語が語られるのは、ブッシュの場合には有り得たのかもしれないと思わせるものがある。おそらく、アメリカ個人主義の伝統なのかもしれない。

ブッシュは、父親から離れなければならなかったにもかかわらず、同じ道に入り、それを超えることがついにできなかった、ということなのだろう。もちろん、映画の核心は、なぜ大量破壊兵器の確認ができなかったにもかかわらず、大統領と側近たちの会議で、最終的にイラク攻撃が承認されたのか、という点だ。これは、見てのお楽しみ。

ブッシュが最も楽しげに写り、自分でも熱中していたのが、野球球団の経営であったというのが、ストーン監督の解釈だが、それはアメリカ国民の間だけのことに止めておいて欲しかったと思う。この映画の中で唯一迷う場面がある。それは、退任の記者会見で、就任中なにが失敗であり、その失敗から何を学んだか、という質問を受けたときだ。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。