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2009/05/20

線という活動

どのような状態になると、芸術活動が活性化するのか、ということは永遠の謎だが、何人かの人びとを観察していると、そこに共通点がないわけではない。きょうは、偶然にも線描という方法を手に入れた途端に、能動性を発揮した二人の展覧会を相次いで見ることになった。

きょうは朝から、大学で3つの会議が重なってしまうという珍しい現象にあった。そのうち、二つへ出席すると返事を出したが、実際には1時間で終わるような会議はひとつもないので、結局のところ、お昼過ぎまでひとつの会議に出て、他のふたつはパスすることになった。

さらに、午後からは打ち合わせが相次いで二つ続いたため、それで時間になってしまった。慌てて、最初の展覧会会場のある千葉駅へ向かう。ところが、駅前のデパートへ飛び込んだのは良いが、てっきりデパートはひとつしかないと思い込んでいて、会場を間違えてしまったのだ。もうひとつあって、老舗のデパートのほうが会場だった。

14代今泉今右衛門氏の展示会だ。以前にも、東京での展示会へは伺わせていただいた。前回には、ちょうど幾何学模様の雪をモチーフにした「墨はじき」を編み出したときで、それまでとはちょっと異なる展開を見せ始めたときだった。そのときには、あまり説明を聞いても、こちらの未熟さもあって気づかなかったのだが、この技法はどうやら「線描」の方法らしいのだ。

先代の13代が吹墨技法を編み出して、点描的な方法論を確立していたことが、前提となっているのではないだろうか。おそらく、このことはご本人に聞いてみないとわからないが、先代の点描に対抗して、14代は線描にこだわったのではないかと思われる。

その線描の技法がとりわけ美しかったのは、白い地の部分に線描された透明な更紗文だった。これが窯から出てきたときには、かなり感動的な瞬間だったのではないかと想像される。このことを今右衛門氏に聞いてみたいと思った。このことだけでも、今回企てている取材の価値はあるように思われる。

Photo 今日二つ目の展覧会は、千葉市美術館に来ている「パウル・クレー東洋への夢」展である。先週の予告どおり、訪れたしだいである。パンフレットによると、わたしが先頃読んでいた『クレーの日記』の日記番号842に、「ここでやっと私の線の使い道が見えてきた。1907年のある日に陥った装飾の袋小路から、ついに出口を見つけた!」という言葉があったらしいのだ。ちょうど、この言葉を綴った頃の線画が来ていた。これによって、クレー特有の線描画法が確立していったらしい。

クレーの線描には、世代を経ても本人にとっては共通な特徴があるように思える。それは、クレーが絶えず、線を二重にしたり、絵具でコピーした線を使って厚みや奥行きを出したり、さらには筆太の線で欠落した部分を残す表現をしたりしている点に表れている。つまり、線描のあらゆる文法を駆使して、線を活動主体としたクレーの世界を創りあげているのだ。クレーは、「線は造形のエレメント」だと言っている。

Photo_2 きょう最後の珈琲は、美術館近くのいつものコーヒー豆屋さんで、ホンジュラス。豆でブラジル・サントスNO2と、キリマンジェロAAをそれぞれ200gずつ煎ってもらって帰宅する。

豆屋さんの出口に、珍しく「コーヒーの木」の苗が置かれていたので、これもさっそく購入する。店の人は、このままですこし育つまでPhoto_3 我慢して、そのあと鉢を入れ替えてください、と言っていた。実がなることまでは期待していないが、どこまで育つのか楽しみだ。ものの本によると、3メートル位までは成長するらしい。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。