« 他者性に対処する方法 | トップページ | 一日の使い分け »

2009/05/02

新しい1歩を踏み出すとき

忌野清志郎氏が亡くなったと報ぜられた。それで、1970年代の映像をYouTubeで見た。

何といっても、「ぼくの好きな先生」が初期の作品では思い出に残っている。当時、1973年ごろ、いわゆる石油ショックが襲ってきて、日本は今日どころではなく、経済マヒの様相を呈していた。

今日の金融危機だと、危機に陥る金融資産があるということだが、1970年代には、まだまだ資産もなく、高度成長期が終わってしまい、原油の輸入もできなくなり、日本経済は戦後最大の危機を迎えていたその年だった。フロー経済の危機で、オタオタしていた時代だった。

当時、横浜の学生であって、東横線の白楽というところに下宿をしていた。この年、下宿の近くの神奈川大学の大講堂で、浅川マキと、それから忌野清志郎が所属していたRCサクセッションがコンサートを開いたのだ。当時はまだ、ロックバンドではなく、アコースティックのバンドであった。

まだまだ、大学紛争の残滓が残っていて、そのコンサートも当然学生の資金稼ぎだったと思われる。神奈川大学大講堂へは、そのとき初めて行ったのだが、外見からして横に細長く階段状になっていて、流れるようなフラットな形状が素晴らしい建物だった。今は、取り壊されてしまって、跡形もない。この神奈川大学にその後教えに行くようになるとは、当時はまったく考えても見なかった。

RCサクセションはどちらかといえば、前座であった。生のベースの音を響かせて、渋い舞台だった。けれども、そのなかで、なにか変わるんだ、というメッセージを出し続けていて、それがこちらにびんびん響いて伝わってきて、たいへん印象に残った。この1年のうちに、終わりになるか、それとも、生まれ変わるか、の瀬戸際に立たされていたのだ、とあとで知ることになる。

1歩踏み出すかどうかの、直前の舞台だったのだ。その後、結局1年では終了せずに、35年有余にわたって、ロックに邁進したことになる。そのコンサートには、わたしの友人たちもたくさん来ていて、そろそろ就職を考える時期にさしかかっていた。

経済学部のS君と、彼の恋人だとみんなに思われていたKさんも来ていたし、また同じく教育学部のMさんも合流してきて、帰りの坂道を歩きながら、漠然と将来のことに思いを馳せ、駅の手前の中華料理屋で、どの1歩を踏み出すのかを話した記憶がある。

RCサクセションの歌は、そのような意味では、元気付けたっぷりの亢進剤の役割を果たしてくれたような気がする。その後、節目節目にそのような歌がラジオから聞こえて、そのつど1歩を踏み出す能動性を受けたような気がする。

新聞でビートたけし氏が「ぐっと上がっていく時に、よく一緒にやった」と言っていて、うまく表現していた。世代特有の問題というものがあるのだ、と思った。

いまでは、すっかり歌を唄ったからといって、さすがに感情を高ぶらせることは少なくなったが、当時まだ売れていなかったバンドが、「ぼくの好きな・・・」を選んでいく姿は痛快だった。わたしも就職を考える際にも、会社へ入るかいなかを真剣に考えなければならないという時期を迎えていた。だから、こうした道に入っていった、ひとつの伏線として、切羽詰った彼の影響があったのかもしれない。もしあの世で出あったら、当時の話をぜひ聞きたいと考えている。またひとり、話を聞きたい人が亡くなってしまった。

« 他者性に対処する方法 | トップページ | 一日の使い分け »

心と体」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/173786/44878171

この記事へのトラックバック一覧です: 新しい1歩を踏み出すとき:

« 他者性に対処する方法 | トップページ | 一日の使い分け »

社会経営研究配布中

  • 2015study

社会経営ジャーナル配布中

  • 2015journal

開いている講義    「社会的協力論」

  • cooperation

「音を追究する」第13回・第14回

  • art

「多様なキャリアを考える」第2回・第3回・第4回

  • cooperation

「グローバル化と私たちの社会」第11回

  • cooperation
2017年6月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  
無料ブログはココログ

Recommend

プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。