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2009/04/05

話を引き出すときに必要なもの

三日間いくつもの原稿をちょっとずつ書いていたら、結局ちりぢりの文章がたくさんできただけで、ひとつの原稿も完成しなかった。そこで気分転換を兼ねて、川崎へ散歩。

昨日、珈琲を切らしてしまったので、いつもの豆専門のコーヒー屋さんへまわる。京急線川崎駅を出て、海岸のほうへ向かって、一本目に「砂子」という地名があって、そこに石でできた標識がたたっている。「旧東海道」がこの細いみちを通っていたらしい。観光用の看板によれば、川崎宿はかなり繁栄していたとのことだ。

そういえば、先日の沼津でも、ホテルを出てすこし行ったところに古い土蔵があって、その辺を散策していたら、やはり「旧東海道」という標識がたたっていた。ということは、あの沼津の旧東海道は、まさにこの川崎宿の旧東海道につながっていることになる。当たり前と言ってしまえばそれまでだが、途中断片化しているかつての繁栄した道が、時空を超えて結びついたのだ。

街を知るということは、このようなことをいうのだと思う。この道を行くとどこに出て、どのような店があるのかが感覚的にわかってくる。コーヒー屋さんへ行く途中に、勝沼ワインを置いてあると宣伝している酒屋さんがあるというので、以前見たかすかな記憶をもとに一本曲がって、その方向をながめてみたけれども、結局見つからなかった。あとで知ったのだが、その店は最近移転したらしい。それは予想していなかった。

090406_154601_2 今月の珈琲として、ケニア産とコスタリカ産がおいしそうだったので、煎ってもらうことにする。店内で飲む珈琲は安く美味しいので、今日も所望する。すると、酸味の利いた味で、とてもこんなに安い値段で飲めるようなものではないので、さっそくこの珈琲もください、と依頼すると、じつはこれは、いつもよりすこし高い豆なんです、といって、ハワイ産の豆を出してきた。ちょっと躊躇したが、やはり酸味に目が無いので、購入してしまう。

川崎の繁華街は、夜は相当賑わうが、昼はなんとなくのんびりとしている。通り抜けて、チネチッタへ入る。

今日の本題は、Presidencyという大統領と国民との関係だ。大統領が持っている最高権力とはなにか、ということで、それをめぐっての言説の物語だ。映画「フロスト×ニクソン」で、インタヴュアーと元大統領とが、この最高権力とは何か、ということを一番の山場にして、丁々発止の攻め合いを行う。「言葉の決闘」という言い方を、ニクソンはしていた。

見どころは、インタヴュアーがいかに失意のニクソンから、話を引き出すことができるか、という点にある。予想されるのは、その引き出されるときに、一瞬の「同定」つまり聞く側と話す側の一致が生ずるのだが、その一致がどのようなものとして描かれるかが問題だ。映画だから、驚きの部分を残しておかないと、面白くないとはいえ、実話とかなり違っているのだ。それは、ニクソンの性格に依存していて、本人と写される人とのギャップが決して埋まらなかった人ではないかと思われた。

この筋には関係ないけれども、大統領が冗談を言うのもたいへんだな、と感じたのは、部下を相手に、インタヴュアーの部屋に盗聴器を付けなければ、と言って、小さなメモ帳を取り出すシーンだ。もちろん、これは冗談なのだが、部下は真に受けるという演技をする。このときのメモ帳は、本物だろうか。大統領は、つねに近くに人がいて、言うことはその秘書が書き取ってくれるのだから、メモ帳は持たないのではないかと思っていた。メモ帳はニクソンには似合わない。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。