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2009/02/05

魚市場について、その1

魚市場について、今年は調べて、積極的に授業に取り入れている。放送の講義へかけるにはまだまだ時間がかかりそうだが、スクーリングのほうではかなり面白くなってきている。

この20年のあいだに、日本人の魚をめぐる生活がかなり変わってきているのだが、それはなぜなのか、たいへん興味があるところだ。

たとえば、魚の生産量はこの20年間に半減している。その影響はわたしたちの食生活にかなりでている。講義のなかで、魚を食する頻度を聞くと、若い学生たちほど魚を食べていないことがわかる。クラスによっては、週に1回も食べない学生が多くを占めるに至っている。食生活の変化がかなり進んでいるのだ。

Market せっかく銚子に来ているのに、これまで魚市場を見学したこともない、ということは不自然であった。思い立ったときに行わないと、あとで悔やむことになる。

銚子には、第1市場から第3市場まであるが、タクシーで駆けつけると、第1市場ではちょうどマグロの水揚げの最中だった。毎日、マグロ船が入るわけではないので、ラッキーだった。この船は、白くかなり新しい船だったが、美しいフォルムを海に写していた。Photo馬が出走を終えたように、水で船員たちが清掃して、はやくも岸から離れようとするところだった。

ちょっと「南」にいったところで、これだけのマグロを取ってきたのだそうだ。このちょっとというのが、鹿児島県あたりなのか、それともフイリピンあたりなのか。自動車に乗らないわたしが、ちょっとそこに、と言われて、歩きつかれたことがあるように、おそらく数千キロを超えるであろう、ちょっとそこの遠洋のことを実感することには無理があろう。

Photo_2 千尾以上のマグロが並ぶと、海を知らないわたしにとっては、壮観と言うしかない。銚子のホテルには、壁画くらいの大きな玄人はだしの高校生が描いた魚市場の絵がかかっていて、そこには数百尾のマグロが描かれているのだが、このような豊漁はめったにないのだと思い込んでいた。

だから、たった1隻で、こんなに大量のマグロPhoto_3が水揚げされていることなど想像もできなかった。学生たちに写真を見せても、自分たち が住んでいる街で、このような光景が展開されていることは、ほとんどの人が知らなかった。日常は、日常を超えて存在するのだ。

9割は鬢長マグロで、美味しいものを紹介することに長けている「魯山人」であっても、このマグロは別で、三流どこの刺身にしかならPhoto_10ず、仕方ないので、米国のツナになるとされている。こうみていると、程よい流線型をしていて、ふつうのマグロよりよっぽど身が引き 締まっていて、見ている分にはたいへん美しいのだが、見た目に美しいものが美味しいとは限らないというのは、陸で取れる野菜と同じだ。

市場では、値段の高いものから低いものに向かって並べられるそうだ。手前のマグロは、よく見ると、穴が開いていたり、傷がついていたりする。事務Photo_5所に近いものほど、引き締まったものなのだそうだ。そして、鬢長マグロ以外のマグロが並べられている。

入札は、経済を学んでいるものにとっては、やはり興味深い出来事だ。仲買人たちはみな免許をもっていて、それぞれ会社の名前入りの入札表に、マグロの番号と価格を書いて、事務所の入札表入れへ投げ込んでいく。あとで集計して、放送で結果が知らされていく。

Photo_6もちろん、入札は緊張するが、そのあとの結果をしっかりメモして、今後の市況に備えることも重要な仕事なのだ。手鍵を駆使して、マグロの本体の内蔵を取り出した切れ目やひれをみたり、尻尾の丸く切り取られたものをひょいっと引っ掛けてみたりする仕草は、かれらにとっては自然な仕草なのだが、わたしたちにとっては崇高な業に見える。

Photo_7数十分ですべての取引が終了する。今日は安いもので、20キロほどのものが1万2千円、もっとも高いもので、80キロほどのものが、30万円ほどだった。同じ魚なのに、この差がどこに由来するものなのか。

仲買人たちは地元の人が多かったが、それをPhoto_8取り巻く人々として、運搬人たちがいる。さらに、黒いスーツに身を包んだ商社の人らしい一群も遠目に取引を眺めていた。卸業者なのか、スーパーマーケットの買い付け人なのか。

わたしたちの食卓や、寿司屋のカウンターに乗るころには、Photo_9これらのマグロの値段は3倍~5倍になって、違う顔をみせることだろう。ごろんと船を出てきた生き物は、最後は食生活の蛋白源として、美食の対象として、この港街から大都市へ向かっていくのだ。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。