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2009/02/09

「チェ・ゲバラ」と「連合赤軍」

劇場に入ると、階段状になった席にずらっと客が入っている。この種の硬質な内容の映画にしては、これだけ人が集まるのは珍しい。団塊世代の年配の客が目立つ。そこには、この世代特有のかなり意識的な理由があるのだと思われる。じつは、自分のなかにもそう思えるところがあるのだ。

昨年公開されて、キネマ旬報ベスト5に入った映画「連合赤軍」については、封切りのときに観てはいたのだけれども、どうもいつものようには言葉にならず、わたしのなかで、映画としては言いようのない状況になって困っていた。封切りの映画館では、それこそ立ち見でも溢れてしまうほど、満員だった。それほど、このことは人びとの関心として生き続けていることはたしかだ。それにもかかわらず、まだわたしたちの世代のなかで判然としないことが多く残されているから、言葉にならないのだと思っていた。

今回映画「チェ」が公開されて、ちょっとだけだが、「判然としない」部分がわかった気がした。それは、「連合赤軍」と「ゲバラの革命」とどこが異なるのか、という見方ができることに気付いたからだ。

もちろん、実際のところはどうであったのかはわからない。映画で描かれるものと、現実とは異なる。けれども、そこで底流として支配していたものが何であったかを知ることは、大切な視点であると思われる。

両方ともに、武装闘争ということを掲げて、人民の自由獲得を目指した点では、共通点を持っている。ところが、片や人民の解放どころか、自分たちの自由も失う結果を招来した。片や人民を解放し、自分もその国から自由になった。この違いは、なにに原因があるのだろうか。

印象から求めるならば、まず「暗さと明るさ」、それは開放性(オープンさ)ということだと思われる。ここが違うと思う。脱退したいと申し出ることに対して、閉鎖的か開放的かという点は決定的だ。イヤなことをやっても成功しないという真摯なニヒリズムが必要なのだ。ここで強制したら、お仕舞いだが、現実はかならずしもすべて自発的に活動が行われるわけではないので、この点を強調すると、ゲバラの革命はやはり特殊例だということになってしまうだろう。けれども、なぜ自由に活き活きとした革命ができるのか、という視点は重要だ。

つぎに、無名性ということだ。名誉を求めたり金品を求めたりする動機で、集団を形成すると結局は、権力闘争に陥る。ここにも、かなり難しいものがある。ゲバラがキューバではまず無名兵士として異国のゲリラ戦に臨むことになったこと、キューバ革命が成功した途端キューバを離れたことなど、ゲバラの自ら進んでの選択には、この特性が色濃く残る。

最後に、もっとも現代的な視点を持っていると思われたのは、偶然の産物かもしれないが、「後方支援(logistics)」ということだ。このことは革命に限らず、活動すべてに共通する興味深い視点だと思った。どのような戦争や革命でも、後方支援が乏しい闘いは最終的には敗北するのだ。ゲバラが何回か、カストロに疎んじられる。そのときにつねに、後方支援にまわされて、このことの有効性を悟っていくのだ。

革命では、フロントがすべてを支配するということは、現実には真実だとしても、フロントだけでは何も動かないということも同じく真実なのだ。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。