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2009/01/11

「1930年代・東京」展

二日間連続して、松本竣介の絵画に出会うことになった。

明日で終了してしまうというので、学習センターでの仕事を早目に終わらせて、目黒の庭園美術館で開催されている「1930年代・東京」展へ行ってきた。多くは、昭和初期の1920年から1930年代にかけての絵画、建築、写真などだが、その中に松本竣介の1939年制作「建物と人」が来ていた。

この絵には、いぜん岩手県立美術館でお目にかかっているから、二度目になるのだが、昨日の今日だからびっくりした。昨日の「街」に連なるもので、建物群や人物群が重なるうえに、青い色調の透明な膜が張られ、これらが現実の世界と似て非なるもうひとつの世界を描いていることを明示している。

だから、どうしても少しずらした違う世界を描いているように見えてしまうので、気がつかなかったことがあるのだ。たとえば、昨日のものは、換喩的に横に広がっていくような、多視点的な描き方をしていた。けれども、どうもこちらの絵は、同じ描法を使っているので、一見すると同じ効果を狙っているかのように思ってしまうのだ。

けれども、「建物と人」では、建物も人も、縦に並んでいる。昨日の横に並べてあるものと微妙に構図が異なっている。縦に並べることによって、隠喩的表現を強調していて、建物もどっしりとした建築物から徐々に手前に来るにしたがって、動的な乗り物へ視点がずれてきている。人びとも、表情の見えない不特定多数のなかから、次第に顔が見えるようになり、最後は妻の肩に手をかけようとする、おそらく自分が描かれている。抽象物から具体物への変遷が見事である。

他にも、杉浦非水のポスターや、山名文夫のカフェバー図案集など、コメントすべきものがたくさんあったが、またの機会にしよう。

庭園美術館の入場料割引のドレスコードは、今回帽子であった。先ほどの「建物と人」でも、1930年代の特徴をあらわす帽子が描かれていた。宵闇迫るアールデコの庭園美術館の建物に、夜間照明の帽子がぼんやりと輝いて、わたしたちを1930年代へ誘っていた。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。