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2008/10/04

バウハウスの系譜

20081004 家を9時10分に出て、浦賀の横須賀美術館まで、電車とバスを乗り継いでぴったり1時間。10時10分に窓口でチケットを購入できた。空の青さといい、海の広さといい、浦賀ののんびりさといい、申し分ない土曜日の朝だ。

早稲田大学のO先生がすでに数週間まえに、ここを訪れていて、ブログに書かれていたので、「ライオネル・ファイニンガー」展が開かれていたことは知っていた。けれども、1時間で来ることができることは知りつつも、なかなか時間が取れなかった。それで明日までだ、ということになり、ようやく他のものを犠牲にしてまでも、という気分になったのだ。

バウハウスを知ったのは、やはりカンディンスキーからで、社会科学者出身というので、興味を持って、絵に接近していった。そして、ご多分に漏れず、なぜ「抽象絵画」という手法が形成されたのか、ということが不思議に思われたから、深みに嵌っていったのである。

抽象絵画成立のころを追って、ミュンヘンのレンバッハ美術館や、ワイマールのバウハウス博物館、ベルリンのバウハウス博物館なども回って確かめてきた。(肝心のデッサウへ行っていないというのは、ちょっと間が抜けているが、その辺は素人のなせる業なのだ。)

その過程でクレーなどのほかのバウハウスの関係者のものもかなり見てきたはずである。ところが、同じ「青の4人」に属するファイニンガーについては、有名な「ヴァイマール国立バウハウス設立要綱」の表紙を飾った「大聖堂」しか知らなかった。この印象が強かったので、これほど多才な作家だということをまったく理解していなかった。今回、このように全貌を明らかにするような展覧会にめぐりあえて、ほんとうに良かったと思う。

当然、このバウハウスの動きは大正期の日本に大きな影響となって出てくるのである。この辺について「バウハウスの日本への影響」展も、一度どこかで企画して欲しい。個別の日本の画家の影響は伝えられるものの、全体的に、日本はどのようなところをバウハウスから受け入れたのだろうか。

この「大聖堂」のイメージで、彼をみると、ちょっと全体からずれてしまうことが、初めてわかった。まず、ドラマ性、社会性、風刺性の作家として世に出た。このことはたいへん大きいと思う。初期の作品「緑の橋」には、それからずっと続くファイニンガーの基本的モチーフがある。

まずこの絵では、観るものと観られるもの、という分裂が新鮮で、後半の抽象画への道筋がここでもすでに準備されている。シカゴ・サンデー・トリビューン紙連載の「ジムジャムおばさん」は、頭でっかちの発想が時代を反映して分裂しているのだが、現代のドンキホーテ的な面白さがあった。初期のころの人物像は、手前に必ず道化が二重写しのごとくにそえられていて、人物の分裂が風刺されている。

このような多重的・多面的な世界観は、当然のように、キュビズムからの一連の抽象画運動へ連動していく宿命を持っていたと思われる。「自画像」、それから版画の「パリの通り」などにそれが表れていた。抽象化への理論は数多くあるものの、キュビズムの洗礼を受けないで、この時代を超えることは誰もできなかったのかもしれない。

後期の作品のなかでは、写真から水彩画、そして油彩へとプロセスのわかる「村」が印象に残った。レイヤーの重なりが、最終的なものには決定的な作用を与えている。水彩画までの平面性が、油彩では、一気に多面的なものへ変貌を遂げている。

これでも2時間たっぷりかかってしまった。もっとじっくりと時間をかけたかったのだが、仕事が待っている。途中、弘明寺の「Makoto」レストランで、手作りハンバーグランチ、コーヒー付きを食べる。午後からは、神奈川学習センターで、新たに講義を開設なさった先生方と打ち合わせ会を開催した。今年度は、わたしの当番に当たっているので、パスするわけにはいかない。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。