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2008/09/16

中間地域について

甲府に来ている。今年の夏で、早くも大学での集中講義も三年目である。1年目では見聞きしても、わからないことが多かった。2年目になって、意外にも地元のひとでも知らないことが、地域に多いことに気づいた。

たとえば、大学の職員の方に、すぐ裏にあるコーヒー屋さんについて聞いてみても、行ったことがないという、それどころか、学生さえも近くのコーヒー屋に入った人が50人ほどのクラスで、ひとりもいないとのことなのだ。

職員の方の言い方が面白かった。「通勤で家と大学との間を行ったり来たりしているだけで、途中で寄り道はしないんです」とのことである。つまり、車社会なのだ。

2年目の後期あたりから、「そんな筈はない」と思うようになった。けれども、やはり1,2年の間は、「そんな」のその内容がはっきりとはわからなかったのだ。

甲府の駅から繁華街を歩いてみればわかるように、櫛の歯が抜けるように、街のなかの専門店が少しずつ無くなりつつあり、寂れてきている。けれども、このことは地方都市であれば、どんなところでも起こっていることであり、珍しいことではない。だから、このことが「そんな」の内容ではない。

もちろん、寂れた商店街の跡地には、東横インやドーミーインが新たに進出してきていて、その周りでは、すこし活気があるようだが、ほとんどはビジネス客を集めているに過ぎず、本格的な活性化からは程遠いと思われる。

かと言って、車社会の浸透で、大型ショッピングセンターやモールやアウトレットが郊外にでき、そこでは大型のスーパーがあって、シネコンやSHINSEIDO、トイザラスが入っている。車を持っている人であれば、(持っていないのはわたしだけで、どんな人でも甲府では持っている。)郊外型の買い物行動を行っており、これも類似した都市はたくさんあり、容易に変化を想像できるだろう。だから、「そんな」筈はない、という内容は、このことでもないだろう。

じゃー何なのか、と言われても、あまり自信があるわけではないが、ほんのちょっとだけ言えることは、高齢化が地域に相当浸透していることということだ。つまり、高齢になった人びとが、市街地に戻ってくるとは思えないし、さらに大型ショッピングセンターやモールに繰り出すほど、腰の軽いはずがないということだ。

それで、たぶんという、かなり留保条件を加えたうえでの仮説なのだが、市街地と郊外の間に、中間地域が存在するのではないか、というだ。そして、不思議なことに、その中間地域というのは、さまざまなところに散在していて、まとまっているわけではない、というものだ。

昼食の時間になって、いつもはお弁当を頼むのだが、地図でみると、ちょっと変わったところに何軒か店屋があるのだ。大学の表のほうは幹線から外れて寂れてきているのだが、すぐ裏のほうは幹線でもないにもかかわらず、甲府の荒川沿いに車の通りが良いのだ。それで、住宅地でも市街地でもなく、また郊外でもなく農村でもなく、ちょうど中間に、店屋が存在する。

説明書によると、石臼を早くまわすと熱が発生するので、人手と同じスピードでまわすことのできる機械で製粉しているらしいのだが、石臼自家製粉の手打ちそば「一草庵」がある。

これぐらいオリジナリティを強調しなければならないところをみると、やはり市街地のように自然に客が集まるわけでないことを物語っている。けれども、大型ショッピングのように、規模の経済を追及するわけではないことも理解できる。ほどほどの集客力があれば、良いのだ。

それは、採算性の面から考えても、中規模を狙うのであれば合理的である。大きな資本投下も必要ないし、郊外型や市街地型よりも有利な面が数多くあるだろうと思われる。

何よりも、地域にとってメリットがあるのが、市街地と郊外とに二極化していたという断絶状態が、中間での結節点が育つことで、地域の結合ができる可能性をもっているということだ。

それには、もっと地元の人びととのつながりをつけなければならないだろう。わたしは、今年も自転車で宿舎から通勤しているが、この中間地域ならば、自動車を持っていなくとも、十分対応できる。わたしの場合は、観光客と同じ立場だが、店に入って、客たちの話を聞いていると、やはり高齢者が多いような気がする。ある程度、お金を持っていて、なおかつ暇があることが、市街地からすこし広がった地域に活力を与えると思われる。

2,3年後に、これらの中間地域がどのようになっているのか、また訪れてみたいと思った次第である。

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コメント

はじめまして、わたしはズバリここに書かれた地域に住む者です。毎日を郊外の勤務地まで車で移動するので、住んでいる周りでお茶をする事はありません。週末には自転車を使って荒川沿いを散歩するので「一草庵」はお気に入りのレストスポットです。中間地域に住むことのメリットって、実はあるように思っています。

そうそう、ワインの話題がありましたが、「ソウリュウ」という酒蔵が勝沼にあるので、オススメします。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。