« 試験近くの人間関係 | トップページ | 馬車道の喫茶店 »

2008/07/27

「ムキになったら、いけない」

この2,3日、K大の採点を行っている。今年はいつもの年より、すこし丁寧に採点しているため、時間がかかっている。どのへんが丁寧かといえば、わたしが読書論の制作を計画しているので、参考にするために、学生がどのような本の読み方をしているのか、というところを時間をかけて観ている。

今のところ、どうも学生たちは、本を読んでの直截な感想を書く程度に終わっている。答案を書く前提条件として、2冊読むことを課しているのだが、「比較」と言う作業を行っている学生は少ないし、さらに進んで、本を超えるような想像力を発揮している学生はさらに少ない。

講義のときに、「幅の広い読書」と、「狭く深い読書」の両方を行って欲しい、ということを言ったのだが、いまのところは無残な結果に終わっている。まだ、1年生の学生が多いこともあろうが、試験が終わってからが、彼らのほんとうの勉強が始まるのだと思われる。それに期待したい。

ずっと一日中、答案を観て、照明を暗くした研究室に閉じ篭っていると、精神衛生上悪いので、家に帰ってから、妻のビデオ鑑賞に付き合うことにする。

妻は息子が高校に入った頃から、急に何を思ったのか、高校野球の熱心な観覧者兼私設応援団(外は苦手らしく、もっぱらビデオでだが)と化した。息子が野球部というわけでもない。我が家には他に野球ファンがいるわけでもない。キノコが道端の木に生えるがごとくに、突然変異的になったのだ。

けれども、ビデオを見ていて、「ボークってなに」などと聞かれた。4年間も野球鑑賞してきて、未だ「ボーク」も知らなかったとは・・・。

今日は、北神奈川大会の決勝戦に当たっていた。「慶応高校」対「東海大相模」の1戦だ。わたしにとっては、今年になってはじめて見る高校野球なのだ。骨休みを兼ねて、観始めたのだが、ミスの少ない見ごたえのある試合に、つい引き込まれてしまった。

前半戦には、東海大相模の主砲大田のホームランで、1点先制。そのあと、すぐ慶応が追いつき、さらに逆転する。ほぼ互角の投手戦の様相だった。

また、今回の解説者は、妻の贔屓としている横浜高校の野球監督渡辺氏であった。それで、的確な予想と、現実的な観察をして、向こうを唸らせていた。

ほぼ互角の均衡状態で中盤戦に突入したときに、渡辺氏がいうには、「ムキになったら、いけない」、「センターへ向かって、たたきつけるようなバッティングが必要です。」というと、観ている端から、センターへ向かってヒットが出る、といった具合だ。他人のチームでも、何が起こっているのか、そして何を行えばよいのかが、的確にわかるらしい。ほんとうに、素晴らしい予想力と指導性だ。

中盤後に試合が動いた。慶応が3点とって、4対2となる。しかし、その後東海大相模が再逆転して、4対6とする。さらにまた、9回に押し詰まって、慶応が2,3塁として、同点のチャンスを迎える。このとき、監督の指示が大事だ、として、渡辺監督ならばどのように言うのかと聴いていたが、「2点までは仕方がない。同点までは良い」とのことだった。

つまり、試合というのは、最後の最後までわからない、ということだと思う。負けなければ良いのだ。この辺のふん切りが、監督としての資質となるらしい。試合は、渡辺氏の言うとおり、6対6の同点になった。

ところが、なんということであろうか、ここで家のビデオが切れてしまったのだ。9回裏の同点場面で、きょうの鑑賞会は終了。野球の醍醐味だけは十分すぎるほど楽しめたので、結果なんぞは知っても仕方ないだろう。スポーツは、勝っても負けても、諦めが肝心だ。

それにしても、応援合戦は迫力があった。当然、応援している人びとは試合を見ているわけにはいかないのだ。とくに、味方の選手が活躍していればいるほど、観戦できないことになっている。応援は、本体を観ないという空虚さを、本質としている。

これはすごい状態なのではないかと思われる。わが師N先生の教えを援用するならば、応援というのは、スポーツの表す「メトニミー(換喩)」の一種であって、野球全体のなかに、もう一つの小さな別の世界が喩えとして作られることなのだ。それに参加する人は、野球はできなくても、横に広がって、人と人とを結び付けていくのだ。

これに対して、観戦解説というのは、同じく野球そのものではないにもかかわらず、言葉をもって、深く「比喩」を構築していくのだ。

今回の試合では、「野球本体」と、「応援合戦」と、そして「野球解説」と三位一体の緊張感あふれる観戦ができて、たいへん楽しかった。夜のニュースで知ったのだが、この勝者の甲子園第1戦で当たる相手は、わが故郷信州の松商であることがわかった。(以前にも書いたが、この松商が甲子園で優勝したときに、隣に住んでいたことがあるのだ。けれども、このところは最多出場の誉れは高いが、いつも初戦敗退が続いているのだ。)

« 試験近くの人間関係 | トップページ | 馬車道の喫茶店 »

スポーツ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/173786/41989575

この記事へのトラックバック一覧です: 「ムキになったら、いけない」:

« 試験近くの人間関係 | トップページ | 馬車道の喫茶店 »

社会経営研究配布中

  • 2015study

社会経営ジャーナル配布中

  • 2015journal

開いている講義    「社会的協力論」

  • cooperation

「音を追究する」第13回・第14回

  • art

「多様なキャリアを考える」第2回・第3回・第4回

  • cooperation

「グローバル化と私たちの社会」第11回

  • cooperation
2017年5月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
無料ブログはココログ

Recommend

プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。