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2008/07/25

幼稚症について

最初に歯医者に通い始めたのは、たぶん幼稚園時代か小学校時代で、かなり早い時期に行っている。両親ともに、虫歯には苦労したにもかかわらず、子どもの歯に対しては、あまり気に留めなかったようである。

幼稚園へ通っているときには、ほとんど自覚はなかったのだけれども、歯に関しては鮮明で細密な記憶と、曖昧ではあるが単純な痛さの支配する世界を生きていたように思われる。

いまでも、幼稚園までの行き帰りの道筋に何が在ったのかは、鮮明に覚えている。けれども、それは単純化しているからこそ、覚えているに間違いない。すべてを覚えつくすことは求められていないし、無意識に覚えている以上のことは決して、覚えておくことは必要ないかもしれない。

歯に関しては、ちょうど6歳ごろにまとめて問題が起こってきて、はじめて鮮明な記憶が残ることになる。乳歯が生え変わるということと、そのころに虫歯を経験することである。夜中に柱に糸を結び付けて、ぐらぐらした歯をべきっと抜いた記憶がある。このぐらぐらするときの痛みは、歯を病んだ人にしかわからない憂鬱なものだ。

だから、歯の記憶と言うと、この当時の、やはり幼い時代を思い出すことになる。もしわたしに幼児化が起こるとすれば、それは、歯の記憶に戻って、回帰する記憶が生ずるのだと思われる。すでに起こっているのかもしれないが・・・。

きょう、歯医者へ行く日に当たっていた。待合室へ入ると、ちょっと変わった雰囲気であった。かなり歳を召した男性がひとりいらっしゃって、隣にあるスーパーマーケットで購入したらしい「アイス・モナカ」を頬張っているのだ。それもまだ、診察前らしい。

じつを言えば、わたしもこのM製菓の「アイス・モナカ」は大好物で、死ぬ前にこれをたらふく食べてから逝きたい、という欲望に、昔から駆られている。だから、切羽詰まった心境をわからないではないのだが・・。そこにわたしの将来が見えてしまったのだ。かなり、まずいな。

歯医者の待合室で、「アイス・モナカ」を食べる、というのは、この男性にとってものすごく意味のあることだったのだろう。1回は快感で、2回目からはやめられなくなってしまったのではないか、と想像する。それぐらい魅力的な所作であり、そこに欲望の膨張を見ることができる。

もちろん、傍から観れば、明らかに幼稚症的な行為であり、おそらくこの男性は、すでにかつてのように、欲望を抑制することができなくなってきているのだろう。自己抑制が効かなくなるという、ひとつの典型例であろう。

歯医者の先生もたいしたもので、おそらく待合室での出来事は知らないにもかかわらず、この男性に対しては、それとなく歯磨きの励行を示唆して、診療を終えていた。

さて、ちょっと牽強付会的ではあるが、この行為は、わたしに対して、ひとつの基準を提示しているのではないかと思われる。

幼稚化が起こったか否か、ということで、将来もしわたしがこのような行為を自分で止めることができなくなったら、今後、わたしが歯医者の待合室で、何か甘いもの、たとえば「アイス・モナカ」を食べだしたら、それはわたしが幼児時代に戻った、ということだと思われる。

「アイス・モナカ」が今後はわたしの幼稚化チェック表の一項目になるのだ、と考えると、なんとなく将来は灰色のような気がしてきてしまったのだ。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。