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2008/07/30

試験前のあくび

最近とくに激しいのは、眠気である。すごいなすごいな、と思いながら、考え事をしていると、以前は眠気が飛んでいってしまう経験をしたものだが、近ごろはむしろ激しい眠気に襲われる。

これは良いアイディアだ、と根を詰めて、細部を考えている最中に、いつのまにか瞼が下がってきて、気持ちよく眠ってしまっているのだ。このときの眠りは、たいへん心地よいので、申し分ないのだが、なぜ眠気に襲われるのか、よくわからない。

たぶん、脳のなかの酸素供給が、いつもはあまり働かせないにもかかわらず、急に使ったせいで、足りなくなるのではないかと思っている。探偵ポアロの「灰色の脳」説である。でも、きっと脳のホルモンや働きのリズムなども、関係しているのだろうな。さらに、場所の雰囲気や周りの人びとの状況も作用しているに違いない。

昨日と今日、そして明日は、朝から夕方まで、ずっと試験監督を行っている。これ自体、眠気を誘う活動ではあるが、ここで眠ってはならないので、じっと我慢している。けれども、わたしも人間なので、うとっとするときがあるが、そんなときに限って、職員の方が緊急の伝達で部屋に入ってくるときだったりする。いつもは、しっかりしていますよ。もちろん・・・。

わたしのことはこの通りだが、教壇から見ていて、前から気になっていたのは、これから試験時間に突入するぞ、という1分前ごろに限って、あちこちであくびをする人を見ることだ。答案に飽きて、試験時間の後半にあくびをする人は数多く見るが、そうではなく、明らかに飽きる前のもっとも緊張する場面であくびが出てしまうらしい。

自分でも、なぜ出たのかわからないらしく、ばつの悪い顔をして、周りを見回している。あまりの緊張感から、あくびが出てしまうのだろうか。それとも何か特別な体内変化が起こっているのだろうか。それともやはり、酸欠状態なのだろうか。しかも、あくびは人びとの間に伝染するということがわからない。

試験前の5分間というのは、摩訶不思議な時間なのだ。受験者と監督者が、何もすることなく、にらめっこしなければならない。以前には、よく冗談を飛ばして、受けていたものだが、やはり時と場所からすれば、あまりはしゃぐのは良くないと歳をとるにしたがって、思うようになった。というよりは、年とともに、妄想が押し寄せてくるようになって、沈黙しなければならないときには、その妄想に浸ることができるようになった。だから、5分のにらめっこなどは、苦にもならない。

このような中での「試験前のあくび」というのは、じつはたいへん好ましいことなのではないか、と思う。生理的には、酸素をたくさん摂ることになるし、精神的には、ちょっとリラックスすることができると思えるからだ。野球選手が緊張したときに胸に手を当てたり、陸上選手がこれから走るときに深呼吸したりしているが、おそらく「試験前のあくび」はこの「深呼吸」に相当しているのだと思われる。

あくびや深呼吸には、凝り固まった考えをほぐして、もっと遠くへもっと広いところへ、想像を羽ばたかせるような働きがあるのではないだろうか。この点からすれば、眠気はあくびの前兆ということになるだろう。

「眠気」に陶酔するのが、仕合せなのか、それとも、「あくび」で覚醒するのが仕合せなのか。明日の監督では、どちらの境地に身を委ねることにしようかな。

実際には、想像力を逞しくするためには、その考え方やアイディアにとっては、両方が必要なのではないかと、わたしは思っている。ひらめいた考え方に陶酔しなければ、良い考え方でも磨かれることはないだろう。また、しっかりと他の考えと比べて、目覚めた状態を維持しなければ、およそ大した考えは生まれてこないだろう。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。