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2008/07/10

Cumulativeということ

Maki 研究室に、M氏から新著が届いていた。『循環的・累積的因果関係論と経済政策―カルドア、ミュルダールから現代へ―』(槙満信著;時潮社刊)である。

M氏とは、かつて神奈川学習センターで読書会を開いていた。独特の硬質な意見を発して、いつもみんなをはっとさせていた。

本書では、経済学者カルドアの成長論を検討することからはじめて、さらにミュルダール、村上の政策論を検討している。「収益逓増的」な成長の性質解明に集中している点で、背骨の一本通った書物になっている。

この本の中心的な考えは、「cumulative」ということにある。たいへん魅力的な言葉だ。わたしも『情報と社会』のなかの1章を書いたときに、一度使わせてもらった。通常は、「累積的」という言葉として、蓄積され逓増する性質を指し示すときに使われる。

彼は、このcumulativeを「循環的・累積的」というように、「循環的」という言葉を必ずつけている。なぜ循環的という言葉をつけた訳語を採用したのかについては、粗雑な読み方をしたらしく見逃したらしい。わたしにはわからなかったが、そのニュアンスは感じられた。らせん状に発展していくイメージなのだ。(もちろん、cumulativeに循環的という意味があるのならば、そしてそのことを強く押し出すならば、そのことだけでも、たいへん奥深い事象を表現することになることは間違いない。)

収益逓増ともうひとつの性質として、「外部性」を挙げているのだが、憶測の域を出ないが、これと「循環的」は関係するのだろうか。生産や消費にみられる相互依存関係を「循環的」と言うことも可能かもしれない。

あるいは、ケインやホプキンズたちが言うような「ジェントルマン資本主義」までも視野に入れるならば、この循環的という言葉も活きてくるように思われる。今度お会いしたら、ちょっと挑発してみたい点である。

本書のなかで断ってしまっているので、無いものねだりなのだが、わたしとしては、この言葉を使うとしたら、(おっしゃるように文脈は異なるのだが、)ヴェブレンの視点も入れて欲しかった。プラグマティズムの言葉としても、面白い言葉なのだ。

ということで、当分この本のcumulativeという考え方が頭のなかに住みついて離れないだろう。現代を解釈するための発想を求めている人にとっては、増殖に増殖を重ねて累積し、何かと循環し始める、というイメージは、かなり有効なものだと思う。わたしも、別の事象に対してだが、使用させていただこうと考えたしだいである。

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コメント

Mさんの著作紹介記事、とても嬉しく拝見しました。Mさんもたいへん喜んでいましたし、私も、フェスタ・ヨコハマ以来のお約束が果たせたように思いました。

そのような中恐縮ですが、出版社名を「時潮社」になおしていただけませんでしょうか。潮流の「潮」の字になります。よろしくお願いいたします。

では。

失礼しました。「時潮社」に直しました。

また、フェスタ・ヨコハマの季節が近づいてきつ
つあります。

すこしまだ時間がありますが、夏休みにすこし頑
張って仕事をして、お祭りの日にお会いできるこ
とを期待しております。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。