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2008/06/12

築地はなぜ注目されるのか

築地というところが、なぜこんなに注目されるのだろうか。理由をつければいくつか上げることは難しくないのだが、わたしの見るところ、食文化の「シンボル」だからだと思う。

映画「築地魚河岸三代目」を観て来た。コミックのダイジェスト版ということだったので、細部が省略されていたのは残念だった。しかし、人情劇の系譜はいたるところに見られたので、役者の演技を観にいく人には満足されたのかもしれない。俳優の長老や中堅の演技は、素晴らしかった。

けれども、映画を観ていて感じたのは、やはり築地市場は「市場」であるのだけれど市場でない部分の魅力がある、というところだと思う。シンボルというのは、多義的であるということだ。

たとえば、柄本明演じる築地の寿司屋が、「生簀で育ったさかなはうまいよ」と、常識と異なることを言う。この言葉の裏には、多くの意味が隠されていて、天然のさかながいかに生簀で蘇生されて出荷されるのか、を主人公の旬太郎は、銚子の生簀業者から教えられることになるのだ。ここには、じつは、さかなが獲れてから、消費者の口に入って、さらに美味しいと感じさせるまでの複雑な「流通過程」が含まれているのだ。

先日、この欄でも紹介したテオドル・ベスターの『築地』や、最近の寿司をめぐる経済書には、これらの築地のもつシンボル要素が描かれている。だから、なぜ築地が注目されるのかといえば、それはこのような複雑な人間関係を反映しているからに相違ない、ということになるだろう。このことが、わたしたちの興味を惹くのだ。

さて、人間もあまりに荒波にもまれ続けていると美味しくなくなってしまう、ということはあるのだと思われる。「生簀」が何を意味するのかは、人によって異なるとは思われるが、ちょっとした工夫で自分なりの「生簀」を作ることは人間にとって必要不可欠ではないか、と映画の本筋ではないところに感じ入ったしだいである。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。