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2008/06/20

単位互換とネットワーク

大学間の「単位互換制度」についての説明をするために、小田急線「相模大野」を訪れた。「単位互換」という結びつきは、大学というものを考える上で、たいへん興味深い。

相模大野駅に降り立つと、駅そのものがショッピングセンターになっており、さらに商店街がアーケードでつながり、その先には「伊勢丹」が店を構えている。そして、そのつながりに文教地区が連なり、大学へと導いている。有機的な街づくりが行われていることがわかる。

大学の本部がある本館は、ガラスを多用した明るい建物で、開放的な感じがする。多くの先生方に聴いていただき、また今回ご尽力いただいたT先生にも、たいへん感謝している。

「単位互換」は、言うならば、授業単位を媒介とした、大学間のネットワークである。単独の大学では得られないような効果が、ネットワークが組まれることで、相乗的に生ずることが期待されている。

なぜネットワークを組むと、相乗効果が現れるのか、ということが重要だと思われる。ふつう、ネットワークを作り出す方と、そのネットワークに乗る方とに分けて考えられている。

第一に、ネットワークを作り出すほうからみれば、影響の及ぶ規模・範囲が拡大するために、規模が大きくなり、1単位あたりの費用が少なくなり、いわゆる「規模の経済性」が生ずるからだ、と考えられている。ネットワークは、生産的なのである。

第二に、ネットワークに乗る方からみれば、多くの人がネットワークを組めば、そのネットワークに対する信頼性は沸いてくるだろう。たくさんの人によって確かめられているという安心感が起きるだろう。これによって、ネットワークを組めば組むほど、そのネットワーク関係が拡大し、重層化する効果があらわれる。

けれども、これらは当然のことと考えられているのだが、つまりネットワークが組まれてしまえば、このような効果が見られるものの、通常の状態ではこのようなネットワークが自然に組まれるわけではない。

単位互換でも、同じことが起こる。ネットワークが組まれれば相乗効果が生ずる可能性があるが、最初からネットワークが組まれるという保証は存在しないのだ。ネットワークが組まれる前の制度を壊さなければならないし、新たなネットワークの制度に組みなおすための労力はたいへんなものだ。

以前は注目されていて、最近ではあまり使われなくなってしまった考え方に、「ロックイン」、つまり封印という考え方がある。同じネットワークに組み込んで、そこに「閉じ込めて鍵をかけて」出ないようにしてしまう効果である。

「会員制」によるネットワークという発想は、このロックイン現象を利用していると考えることができる。

しかし、なぜ使われなくなってしまったのか、といえば、本来ロックインを厳しくするならば、それは制度化をきびしくすれば良いのであって、ネットワークという柔軟性を特徴とする組織を使う必要がないからである。

だから、結局のところ、ロックインは結果であって、それが目的ではないということになってきていると思われる。さて、今回の単位互換というネットワークでも、程よいロックインを形成できるか、というところに核心があると思われる。

帰りに、T先生から、今度の7月8日にはこの大学で、放送大学のKiディレクターとNアナウンサーを呼んで、イベント「テレビ番組の作り方」が催されるという話を聞かされた。単位互換よりも先んじて、放送大学との間に「交流」という意味のネットワークが結ばれるのだ。KiさんとNさんならば、強力なネットワークを学生たちとの間に形成することだろう。

今日最後のコーヒーは、相模大野駅改札正面のテラス風の喫茶店「カフェラ・ブヴェットCafé La Buvette」で飲んだ。ちょっと人通りが激しいところだったが、ものともせずに、クリームたっぷりのウィンナーコーヒーを注文した。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。