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2008/06/18

東京の空虚

敬愛する先生方と、霞ヶ関コモンゲート西館にある「霞山会」で食事会を催した。文部科学省・教育会館・霞山会館一帯が再開発されて、昨年の秋に38階のビルに生まれ変わったのだ。新しくなってから、はじめてこのビルを訪れた。

かなり昔、大学院生時代に、この向かいにある三井ビルで9年間ほどアルバイトをしていた。取り壊されてしまった古い霞山会館の1階に「サントス」という喫茶店があり、アルバイト先の研究員の方々と昼休みに入ったものである。

そのころは、「霞ヶ関ビル」にはまだ神話が残っていて、最上階を観光で訪れ、1杯500円のコーヒーで客をもてなす意味が十分にあった。地下には、トリコロールが入っていて、ポットコーヒーが出され、時間に余裕があるときには、かなり長居ができた。しかも、当時のコーヒーとしては、きわめて美味しいと感じた。

「コモンゲート」ビルは、かつての霞ヶ関ビルの持っていたような神話性を取り戻すことができるのだろうか。

第一に、東京中を一望のもとに納めることができる、という点では、かなりの期待を満足させることができると思われる。池袋・新宿・渋谷、恵比寿や品川などののっぽビルと争っても、階自体は少ないものの、中心地Pap_00322にいる分だけ有利かもしれない。

第二に、皇居に近い、という利点は決定的だ。丸ビルや新丸ビルに匹敵する。ロラン・バルトが『表徴の帝国』で描いたような、東京の真ん中には、ぽっかりと大きな空虚が存在する、ということが、じっさいに目で見ることができるのだ。

Pap_00311_2 第三に、眼下に並び立つ官庁街を一望できることも魅力だ。「東京の空虚」の隣には、国会議事堂や省庁の密集した権力の集中が存在しているのだ。「空虚と密集」とがツインになっている様子が、手に取るようにわかる。

これらを挙げていくと、「コモンゲート」ビルはかなりの観光名所になる可能性を秘めている。ビルの素材は、石材をふんだんに使った贅沢なものであり、何よりも天井が高いという点で豊かさを表現している。

ただ、費用を十分にかけている割には、なんとなく象徴性を秘めるようなデザインにはなっていないところが残念であるのだが・・・。そして、下のほうの階に、官庁がそのまま入ってしまっているのは、なんとなく商売をやりにくくしているのかもしれない。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。