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2008/06/15

なぜ同じ音を出すことができるのか

Sn3b00382 1ヶ月ほど前に、Kさんから川崎ミューザで行われる「東京交響楽団」の切符をいただいていた。そこで、じつは昨日、川崎へ出て、丸善のM&Cで「早矢仕ライス」とコーヒーで(今日の最後のコーヒーにもなってしまったが)腹ごしらえをして、向かいにあるコンサートホールへ向かったのだ。

先日の高校時代のクラス会の帰りに、ヴァイオリニストのAさんとの雑談のなかで、オーケストラの話になって、経営で成功しているのは、日本にはあるんですか、と聞いてみた。最近なら川崎ミューザの東京交響楽団だ、とすぐに教えてくださった。それで一度は拝見させていただきたかったのだ。もちろん、音楽も聴きたかった。

だから、ちょうどタイミングが良かったのだ。しかも、こんなに特等の席をいただいてしまって、感謝すると同時に恐縮しているところである。

わたしには、ちょっと高級で難しい、ラヴェル「ピアノ協奏曲」とマーラー交響曲第6番「悲劇的」だったのだが、そこは怖さを知らない楽観主義が勝って、あえて聴くことにしたのだ。それぞれ独特のくせがあり、わたしにとって耐えられないところもあったが、そこは「幸せの時間」に当てることで乗り切った。

とくに、「悲劇的」は出だしの第1楽章が行進曲風に勢良く始まったので、すごいなすごいなと聴いているうちに、第2楽章に入って、叙情的な曲想に180度変わってしまい、さらに第3楽章になると、変奏に変奏を重ね、繰り返しの連続で、かなり難しい大曲となっていった。第4章になると、ハンマーを鳴らす2回の見せ場はあったものの、そのままえんえんと長い構成は続き、最後は呆気なくフィナーレを迎えてしまったのだ。小説ならば、千ページものを読んだ気分だ。

途中、オーケストラの組織について、想いを馳せてしまった。かなり昔になるが、「オーケストラのリハーサル」というフェリーニの映画があって、それぞれの団員が個性的で、決して一緒に同じ曲を演奏しそうにもないにもかかわらず、それでも同じ曲を演奏しようとするのはなぜか、と問いかけていた。このことを、マーラーを聴いていたら、思い出してしまった。

この「悲劇的」を演奏しようと思ったら、おそらくオーケストラの団員それぞれみんな異なる解釈を持つことだろう。そして、自分なりの音符を拾ってくるに違いない。さて、そのときに同じ趣向の交響曲として、なぜ成立させることができるのだろうか。どのパートがどのように譲歩し、どのパートと妥協し、全体としての調整がいかに行われるのだろうか。しかも、それが瞬間ごとに、形成されなければならないのだ。

各パートにはリーダーがいて、それぞれのグループをまとめるだろう。さらに、オーケストラ全体はコンサートマスター(東京交響楽団の場合はコンサートミストレスか)が役割上はまとめることになっており、さらに指揮者がいる。フェリーニは、指揮者が「独裁的」オーケストラを指揮するのではないことを明らかにしてしまった。そのように見える場合も、実際は異なるのだと思える。

Sn3b00391 それでは、何が同じ音、同じ曲を演奏させ、その趣向を一致させているのだろうか。指揮者の個性も十分に要素のひとつではあるが、それに加えて、やはり団員間の相互の調整、つまりは趣向の近接化が必要なのだと思われる。

先日読んだ生態学派の心理学の本のなかに、この状況にぴったりの言葉を見つけた。「オーケストレーション」というのだそうだ。

さて、交響楽団の素晴らしさはオーケストラ経営の中核であるが、それ以外にも工夫されているところはある。たとえば、この建物がとても良い。デザインも良いし、360度の客席も一体感を生んでいる。

Sn3b00353 さらに、休憩所には、ロートレックのポスターの大判が飾られていて、たぶんこれらは、等々力にある川崎文化ミュージアム所蔵のポスターだと思われ、連携事業の結果ではないかと推測される。

満腹の料理を食べたような贅沢な気分をもらって、川崎ミューザを後にする。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。