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2008/05/18

7年ぶりのクラス会

ぱっと会って、懐かしいという感情が湧くのは、どのようにしてだろうか。そのときに、懐かしさの社会的な部分というのはありえるのだろうか。人と人との結びつきのなかにある、懐かしさとはどのようなものだろうか。

7年ぶりに、高校のクラス会が東京駅近くの会場で開かれた。担任のK先生が古希を迎えたときに、前回のクラス会が開催されたので、今回は喜寿のお祝いにちょうど当たることになる。

K先生とクラス全員との関係は、懐かしさの大きな要素であって、消そうにも消えることがないであろう。世話になった人も、世話になったと思っていない人も、目には見えない影響を受けていて、顔かたちの懐かしさを超越した懐かしさだ。挨拶の言葉を聴いているうちに、40年前の通学していたころの記憶がどうしても蘇ってくるのを止めることはできなかった。

会場に着いた途端に、腰周りが90センチに達したと自称するM氏が近寄ってきて、細くダンディだった昔の会話を蘇らせた。続いて、S氏もすぐに加わってきて、7年間の会話の途絶えがまったくなかったかのような話が始まった。

中学校時代からずっと続いて、高校時代もほぼクラスが一緒だったKさんとFさん(女性は結婚すると姓が変わってしまうので、旧姓で呼ぶことにする)も来ていて、この方々との懐かしさのレベルはかなりの高さである。記憶は確実に衰えても、しゃべる口調、しぐさ、ことによるとその内容まで、変わりないのだ。

ギブソン心理学に「不変項」という考え方があって、このような人たちの付き合いでは、その説を信じたくなる。移動や変化からの情報には、不変なものが構造的に含まれていて、時間を隔てても同一のものだと知覚する性質があるとする。この不変なものは、わたしの記憶のなかに存在するのではなく、不変項をその場で読み取ることで知覚すると考えられるのだ。

二次会では、この三人に、高校時代以来はじめてクラス会に参加してきた、気の置けない性格のA氏が加わってきて、他のクラスの噂にしばし終始した。この歳になってくると、やはり亡くなる方々も出てきて、At氏やYkさんのことも聞かされた。この話題はこれからも続くことだろう。いずれ自分もその中に入ることは確実である。

また、三人に共通する中学時代についての話題も、何度話しても、楽しく懐かしい。修学旅行では十和田湖へ出かけたのだが、この中学校には変な伝統があって、最後の日には、カップルでボートに乗るという風習があった。誰と誰がカップルとなって(カップルになるには、いくつかの儀式があるのだが)乗ったのか、というのは、未だに話題になる。

かと思えば、「美人」で有名だった方がいて、なぜかこの方の血液型が特殊であったということを、みんなが知っているのだ。なぜみんなが知っているのかということで、顔を見合わせ、話題が盛り上がったりした。美人薄命伝説の現代版なのかもしれない。

なぜ40年も時間が経過しているのに、その隔たりを感じさせずに、みんな昔のままで話が持続するのか、たいへん不思議な現象である。不変項が存在するとしなければ、到底説明できないだろう。

でも、不変項がぶれてしまったら、どのようなことが起こるのだろうか。じつは同じテーブルの向かい側に座った女性が、どうしても思い出せないのだ。つまり、記憶だけでは到底全員の同定はできないことがある。隣の人に聞いてもわからないし、近くに寄ってきた人に聞いていも、みんなその女性が誰なのか分からないのだ。名簿を見ながら消去法でやってみても、誰も該当しない。不変項をピックアップしようとしても、その人に関してだけ、誰もピックアップできない、ということが生じてしまった。

さすがに、女性に聞くと、すぐに教えてくれて、名前だけはわかったのだが、顔かたちから、話し方にいたるまで、昔のものと同一のものがほとんどないのだ。つまり、不変項が失われてしまっているとしか、説明ができない。Iさん、ほんとうに失礼しました。というようなこともあって、人間生きているといろいろのことが起こるのだ。

今回の幹事のH氏とMさんに、感謝申し上げたい。他のテーブルの方々と話ができなかったのはちょっと残念だったが、挨拶がそのままエッセイになりそうなHさんの言葉や、帰りの電車が一緒だったバイオリン奏者のAさんの雰囲気は確実に「不変項」を強化した。

それから、K先生は昔から義理堅い方だったが、今回もクラス全員に美味しいケーキ菓子をプレゼントしてくださった。わたしたちは、昔から世話をかけることでは、止まることを知らないことも思い出した。今回のクラス会に出席したことで、わたしの周りにある懐かしさについての不変項の彫が、また一段と、深くなった気がする。

なお、他のテーブルだったために話のできなかったNさんが、
クラス会のことをブログに載せていたので、感謝してリンクを
貼らせていただいた。
http://oceansheep.cocolog-nifty.com/mist/2008/05/post_f87d.html

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ブログを読んで下さってありがとう。坂井君のブログも読ませてもらいました。哲学的で素晴らしいですね。これからも時々アクセスさせて下さい。まずはお礼まで。

同窓会・クラス会の記事を書いているブログを拝見しながら、この歌をプレゼントしています。どの学校でも聞いていただける同窓会の歌~君といたふるさと~
http://music.geocities.jp/ntmusicstation/index.htm
で無料です。
1 ふるさとの 友よ 懐かしい 学び舎
あれから 幾年月過ぎたのだろう 
思い出すよ あの頃
アルバムの中の君が セピア色にかがやいている
2 桜舞う 坂道 振り返ると 笑顔の君・・・・

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。