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2008/05/10

雨の土曜日

午前中に、自分の仕事を行って、午後学習センターで大学の務めを果たし、夕方から自分の余暇を楽しむ、という理想的な生活がいつからできるのか、と考えている。今から助走をしておかないと、気がついたときには、自分の仕事もままならず、労働も中途半端で、遊び心も育たないことになってしまうだろう。

ということで、今日はちょうど土曜日であることだし、予行演習の日とするにちょうどよい。仕事と労働の組み合わせのほうは、常日頃からの訓練どおり行って、多少お昼の時間に1時間程度のずれは生ずるものの、うまくいった。

やはり問題は、仕事全体を終えるタイミングである。ちょうど区切りがつけばよいのだが、一人で行っている仕事ならば調整は楽だが、やはり仕事は複数の人との関係があるから、切り上げるのが難しい。たぶん、他のひとから見れば、わたしたちの仕事はそうは見えないだろうと思われるが、実際は「環境」が仕事を決めているのだ。論文を読むときにも、ひとりで仕事をしているのは事実だが、なかなか途中でやめるわけにはいかない。

仕事のあとの土曜の夜に、そして、このようにしとしとと冷たい雨が降る夜には、たぶん人によっても異なると思われるが、わたしの場合には当然映画に時間を使うことになる。チネチッタで、今日封切りの映画「最高の、人生の見つけ方(The Bucket List)」を観る。J・ニコルソンとM.フリーマン主演なので、ほとんど外れということはないだろう。

バケット・リストとは、棺おけに入る前に、済ませておきたいことをリストアップする風習のことだそうだ。フリーマン扮するカーターが、ひとりで書き出したものを、隣のベットに入ってきたニコルソン演じるエドワードが拾い上げて、ふたりの余命の目標にしてしまうところから、ドラマが動き出すことになる。

もちろん、リストの中身は世界中を回って見せるような、まったく荒唐無稽なことで、それを追うのは、ドラマの目的のように見せてはいるのだが、実際そうではなく、仕合せの「青い鳥」はもっと身近に居るのだ、という古典的な筋なのだ。このような筋立ては、安心してみていることができ、なおかつ、何回繰り返されても飽きることはないだろう。

問題は、またしても、三つの世界が登場することにある。カーターとエドワードのガンを患っているという「現実」、最高の人生という「想像」、そして、それらを言葉にした棺おけリストという「象徴」である。ドラマが、このリストをめぐって、展開されることからみても、このリストがすべてを支配していることは確かだ。

このリストに載っていること、あるいは載せるか載せないかを、話し合い、喧嘩し合うことを通じて、ふたりの関係が深められていくことが、このシナリオの秀逸なところだと思われる。

その昔、研究所でアルバイトをしていて、労使紛争に出会ったことがある。このとき、最初に行った事が意思統一であり、そのためにまず、スローガンが作られたという覚えがある。

この映画では、リストというものが人間関係を展開させていて、標語というものの威力を見せ付けている点でたいへん興味深い。企業内の仕事で使われる標語とどこが異なるのかが、ここでは重要な点だ。

主人公ふたりが、エジプトのピラミッドの頂上で会話する場面がある。スフィンクスが人間に質問していたそうである。一つは人生で、自分を喜ばせたことはあるか、もう一つは他者を喜ばせたことはあるか、というものだった。そこで、エドワードは重要な話をすることなる。それは、観てのお楽しみにとっておくことにしよう。

企業内の標語との違いは、やはり他者の反応を中心にすえられるかどうか、ということにあるのではないかと思われる。けれども、口でいうほど易しいものではないことは、すべての人のわかっていることであり、だからこそ映画の種になるのだ。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。