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2008/04/18

映画の反省的手法

神奈川学習センターから望む丘のうえに、神奈川県立外語短大がある。きょう、H先生と訪問する。

最近は、大学間でさまざまな連携を模索している。連携という言葉は、たいへん便利な言葉で、組織と組織間のほとんどの関係は、連携という言葉で表すことができる。人と人をやり取りするような場合にも、また施設の貸借関係でも、連携という言葉で大丈夫である。このような動きを見ていると、合従連衡の戦国時代さながらである。

昨年度までは、金曜日を週休日にしていたのだが、今年度から裁量労働制になって、自宅に居る時間が増えると思っていたら、かえって週休という考え方がなくなってしまったのだ。つまりは、そとに出る機会が多くなったということだ。

以前に、名エッセイストのジブチンスキーが週休という考え方の重要性を説いていて、そのときはぴんとこなかったが、いざ週休のない生活に入ってみると、やはり生活のリズムがおかしい。近代になって、勤労精神が蔓延したときに、その反省として、週休が再度見直されたのだと思う。

そのまま、夕方まで書類を埋めて、参考文献をこなしていたら、必要な書類が手元になく、さらに頭痛も激しくなってきたので、これ以上は仕事は続けられない状態になった。そこで、夜は久しぶりにチネチッタへ繰り出すことにする。

映画「つぐない」の原作は、イアン・マキューアンの小説で、Aさんもまずは原作を読んでから、とおっしゃるほど小説そのものが評判のものである。したがって、映画がその評判を上回るためには、映画的表現を駆使しなければならないだろう。

「つぐない」は今年度数々の賞を取っていて、映画としてもかなりの出来だと思う。たとえば、場面展開の際に、現在のシーンが急に映画の逆回転を起こし、1時間前とか、2週間前とか、3週間前に巻き戻される。これは、頻繁にやったら、映画のつながりを断ち切ってしまうので、あまりできないが、効果的に使えば、かなりの映像の強調ができる。

たとえば、主人公のひとりロビーが、セシーリアへ手紙を書く場面がある。いろいろな文面の手紙を書く。そして、そのひとつを妹のブライオニーに渡すのだ。通常は人生はこのひとつしか選択できない。が、渡してからロビーは叫び声をあげ、過去へ映画が巻き戻される。あたかも、人生に複数の選択があるかのような錯覚が、観ているものに呼び起こされるのだ。いわば、反省的な手法とでも言えるような方法が使われている。

途中、第2部にあたるところで、大戦でのダンケルクの撤退場面があるのだが、ここでもこの手法がたくさん使われるのだろうと思っていたが、意外にすくなかった。戦場をじっくりと描いていて、そこだけで観れば、たいへん興味深いシーンだと思われる。筋からおそらくかなり逸脱しているところだろう。けれども、全体の文脈のなかで、どのような位置づけになるのか、もうすこしどうにかしてほしい、とも思った。

小説ではどのように描かれているのか知らないが、小説や映画の表現自体が、人生における実践を演出することがあるのだというのが、結論だと思う。ふつう、単なる文字や画は知識・情報の部類に登録されていて、現実とは遠いものだという2分法が主流を占めている。

最後のこの償いの方法が描かれていなかったら、この筋からしたら、完全なメロドラマで終わってしまっていたに違いない。映像が現実へ影響を与えるのであれば、この方法はその典型的なひとつの事例になるであろう。この第3部にあたる部分は、観てのお楽しみだ。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。