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2008/04/02

健康について

きょうは、歯の治療と、メガネ・レンズの交換という身体に関係した、二つのことから1日が始まった。春休みというのは、これから1年間間断なく続く仕事に備えて、身体の状態を点検するにはちょうど良い休みの期間となっている。

両方に関係して、「健康の維持」ということについて考えさせられた。もちろん自分の健康についてはいつも関心があるが、このところ常に考えているのは、他者の健康ということで、とくに気になっていた。

歯医者も、メガネ屋も、いわば「他者の健康」を四六時中考えている仕事である。なぜ歯医者は、患者が痛いということがわかるのか、なぜメガネ屋は、どの度数にすれば、クライアントがもっとよく見えることがわかるのか、このことは考えてみれば、かなり不思議な現象である。

他者の主観がわかる、ということが起こっているのである。自分で熱があり、頭が痛い、ということがあれば、たとえば風邪だな、と考えることはできる。わかっている人であれば、ひとに相談することなく、自分は病気だな、という診断ができるかもしれない。

けれども、ふつうの人は自分で思っていても、なかなかそうは簡単に判断することに踏み切れない。だから、今日過労死などが問題になるのだ。自分で健康が100%わかるのであれば、問題はかなりなくなる。

他者から言われて、自分の健康がようやくわかるというのが、実際のところだろう。そのとき、他者にわかるような「印」が必要だと思われる。顔が赤いとか、動作が鈍いとか、などなどの徴があって、他者はそのひとの主観に入り込むことができるのだ。

歯医者は何をもって患者の「痛い」ということを知るのだろうか。虫歯をかんかんと金属棒でたたく。このとき、顔をしかめれば、それが虫歯だとわかる。

高等な「技術」だなと、いつもY歯科で感心するのは、新しい歯を入れたときの噛み合わせがうまくいっているかを確かめえる動作である。新しい歯をいれて、噛みあわせがぴったりかどうか、というのは、顔をしかめるわけでもないし、口がきけない状態では確かめようがない。けれども、これには特別の赤紙を使っていることを知った。ぐりぐりとその紙をかみ合わせると、もしうまく噛み合っていなければ、上下の歯に赤いインクがつくことになるのだ。この確かめ方は、素晴らしいといつも感嘆しているのだ。そういっても、歯医者のほうでは、熟練していればいるほど、きわめて当たり前の認識らしい。

同様にして、メガネ屋はなぜ、患者の目がそのレンズによって、よく見えるようになるのかを、いかに知ることができるのだろうか。検査表があって、右、左と穴の開いている丸を答えさせたり、カタカナを答えさせたりする。その反応をみて、メガネ屋は判断するのだ。ここでは、赤紙の代わりに、身振りや顔つきが媒介して、お互いのコミュニケーションを成立させ、さらに相手の感情を察知するのである。

じつは、わたしたちの健康維持の多くが、日常で、このような相互確認を行っているのではないだろうか。自分の健康についての信号を発して、身近な人にそれを伝える。それをみて、家族やコミュニティの身近な人が健康を判断する。歯医者と患者や、メガネ屋とクライアントほど根拠があるわけではないが、それでも、ちょっとした仕草や態度の違いを察知して、健康についての相互チェックを行っている。

歯医者の診療台のうえでは、このくらいの妄想を考えていないと、つい失礼ながら、こっくりとしてしまう。それは、安心できる歯医者だからこそ、できることだろう。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。