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2008/03/24

映画「ダージリン急行」

ある汽車に乗り込んだら、やはりとことんその旅行を楽しまなければ、救いはないだろう。午前中に、懇談会があり、かなり緊張したやり取りがあったので、それを静めたいと思い、午後は仕事を早めに終わらせて、早々にチネチッタへ行くことにする。

映画「ダージリン急行」の出だしは素敵だった。例の曲者役者のビル・マーレイが登場して、はじめを盛り上げる。E.ブロディ演じる次男がかれを追い抜いて、列車に併走して乗り込むときの自由さと快楽さは、比類ない映像だと思う。このシーンと、最後に同じく、ホイットマン三兄弟が列車に飛び乗るシーンは、秀逸であり、このシーンだけでこの映画をみて良かったといえる。

あとは、ジム・ジャームッシュの世界か、ビル・マーレイの世界、たとえば映画「ブロークン・フラワーズ」の世界を理解できないと、この映画の面白さはわからないだろう。間違いなく、この系譜に属す映画である。

たとえば、花を持って親密な関係にあると思っていた人に、急にバチっと殴られる。本人は、なぜ殴られたのか、わからない。が、理由はあるようだ。(大抵は、大した理由ではないのだが・・・)このような不条理な筋がえんえんと続く。このようなことが面白くなければ、全体としても、面白いとは思わないだろう。

それで、この映画はマザコンの三兄弟が母を求める旅にでるロードムービーだと仮定すると、彼らの欲望の来歴がすっきりとわかるようになるかもしれない。

長男は、相棒に恵まれないで悩んでいる。一緒に働く仲間を欲しがっている。弟たちともうまくやろうと思って、このインド旅行を企画するが、それでも何かがいつも欠落している。

次男は、子供が生まれる寸前なのだが、父性に自信がない。田舎の村で、溺れている子供を命がけで助けようとするが、子供は死んでしまう。けれども、父親の実感を得て、無事子供が生まれることになる。

三男は映画が始まる前の短編から引き続いて、女性への欲望が強い。いずれも、無意識のなかで、マザコンが作用していると思い込んでいる節が見られる。

そして、ようやく母親に会うことになるのだが、ここからは映画を見てのお楽しみとしたい。しかし、結末は自己に目覚め、兄弟の結束を強めて、この映画も大団円をむかえる。このように、筋や理屈は明確なのだが、マーレイ的ユーモアが楽しめるか否かが、この映画の評価を大きく変えることになろう。

きょう最後のコーヒーは、チネチッタのなかにあるイタリアンで、すこし濃い目に焙煎されたものをいただいた。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。