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2008/02/28

千代田区立図書館の成功

Dsc03117 千代田図書館のニュースが、昨年あたりからたびたび新聞に取り上げられるようになった。以前から、ずっと気になっていた。なぜこんなに頻繁に取り上げられるのだろうか。

今回、神奈川学習センターのサポーター制を議論している過程で、サポーター制がすでに取り入れられている社会文化施設をみんなで見学に行こうということになった。1にも2にもなく、千代田図書館を選んだ。ここには、サポーターズクラブという制度が設けられているのだ。

ちょっと違うかもしれないという予感はしたが、それはそれで良いような気がした。とにかく、なぜ千代田図書館なのかというところを知りたかった。話をうかがって行くうちに、なぜ千代田図書館がこうも取り上げられるのかという理由は確実なものとなった。

たとえば、現在日本で一番の入館者と貸出数を誇っている図書館は、このブログでも取り上げた岡山県立図書館で、二年連続で1位を続けている。約100万人を超える人が入館する。なぜ人気があるのかは、行ってみればわかるが、図書館として利用しやすいからであり、「図書館のなかの図書館」という感じだ。ことしは岡山から講義で呼ばれているし、読書論を書かなければならないので、また取材するつもりだ。

それに対して、千代田図書館は、昨年の5月に開館してから、9ヶ月ですでに80万人を超える入館者を数えているらしい。入館者数を上げることは、目標ではないとおっしゃるが、それでも訪れる人が多いということは、それだけの理由があるのだろう。おそらく、新設にして、日本の図書館のトップに躍り出ることになるのは間違いない。

なぜこれほど人気があるのかは、ひと言でいうなら、ここは「図書館らしくない図書館」であるという点で、良い特徴を出しているからだと思われる。本を貸すだけが図書館ではない、とポジティブなことをおっしゃるのは、図書館プロデューサーのMさんである。Mさんは、設立当初の段階から、この図書館にからんでいるらしい。

どこが図書館らしくないか、と言えば、それは特徴を挙げていけば一目瞭然である。Web図書館の試み、新書マップのコーナー、展示コーナーの充実、そしてサポーターズクラブだ。一見、図書館が多機能を獲得している、と見られがちであるが、それとはまったく異なることがわかる。

この言い方は誤解を招くかもしれないが、じつは図書館の「解体」を目指しているのだ、とわたしは受け取った。それは、通常の図書館の目標である、入館者数と貸出数を指標とせずに、それ以外の図書館の「パフォーマンス指標」などを重視する姿勢に現れている。新聞記事への突出した話題提供は、その表れだったのだ。

なぜ「解体」なのかと言えば、それは簡単で、図書館のなかだけではなく、むしろ図書館の外へ向かってのコミュニケーションを発達させているからだ。その結果、図書館としてよりも、これまでの図書館を超えるところで、勝負しているように感じた。

たとえば、それはかなり、千代田図書館の立地条件にも左右されている。つまり、本の神保町を背景にもっているという強みがある。区役所のビルを出てちょっといくと、古書店や出版社が並んでいて、その社会的な関係ネットワークを利用できる。

古書店の展示即売コーナーがあって、「日本永代蔵」や太田蜀山人の本が並んでいた。もちろん本物で、非売品もあったが、16万、18万という値段がついていた。順番で、古書店が展示するそうだ。これは他の図書館では真似できないだろう。

Dsc03116 それから、本題のサポーターとはなにか、ということについても、たいへん興味深い話を聞くことができた。気を持たせるようで恐縮だが、そのことは神奈川学習センターのサポーター合宿でお話することにしたい。

Dsc03120 他にも、今流行の「指定管理者制度」についても、参考になる話が得られた。などなど、盛りだくさんの取材結果を得て、図書館をでた。同行してくださったSさん、Hさん、Kさんと、古い建物の中でもとりわけ重厚な九段会館で食事とコーヒーをいただいて、つぎのサポーター・グループとお会いするために、神奈川学習センターへ戻ることとなった。

(千代田図書館は、区役所の9階、10階にあるが、このビルは以前のお堀端の区役所の向かいにあり、大隈重信邸跡だということだ。だけど、この碑のうえのほうにある、1時25分を示すマークは何を意味しているのだろうか。娘は、大隈の人生125歳説に基づくんじゃないかと言う。ほんとうか?)

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。